
アイスリー株式会社 【公認会計士】金 誠智
「IPOの新しいスタンダードの創造」を目指す公認会計士の探索の軌跡
フリー株式会社が主催する士業に関わるすべての人たちが集まる、年に一度の日本最大級イベント「freee Advisor Day 2025(略して、fAD2025)」の特別プロモーション連動企画として、ふらっとがコラボさせていただくことになりました。
本イベントのテーマは「探索」。ユーザーと“ともに未来の可能性を探索し続ける場”として開催されます。
士業の皆さんが日々、どのように課題と向き合い、業務や組織のアップデートを実現しているのか。
ふらっとでは、そのプロセスを“探索の軌跡”として掘り下げるインタビュー企画として、今回、アイスリー株式会社 金 誠智 氏に取材しました!
経営者の叔父の存在と父の助言で、士業の道に
──まず、これまでのご経歴と、現在の取り組みについて教えてください。
金氏:現在、アイスリー株式会社の代表として、IPO準備を効率的に進めるためのSaaSツール「はじめのIPO(はじめのいっぽ)」を提供しています。SaaS×コンサルティングで「IPOに『楽』を提供する」というパーパスの実現に向けて日々取り組んでいます。もともとは有限責任監査法人トーマツで中小企業の監査を経験し、その後ベンチャー企業でIPO準備の責任者を務め、さらにM&Aによりバイアウトした先でグローバルオファリングの形式でのIPOやIR、サステナ開示を経験しました。その中で感じた“現場の苦労”をツールに落とし込んだのが「はじめのIPO」です。
──そもそも、士業を目指したきっかけは何だったのでしょうか?
金氏:原点は、叔父に支えてもらったことです。父が在日コリアンの大学の先生ということで我が家は経済的に裕福ではありませんでした。そのような中、叔父は事業を営んでいて、我が家のサポートしてくれたり、私に毎月の生活費を工面してくれたり援助してくれていました。そんな叔父の姿を見て今度は叔父を支えるような仕事はないかな?と考えていた時に「社長を支える税理士になりたい」と思ったんです。
その後、父の助言もあり、公認会計士を目指すことにしました。幅広い支援ができると知って、自分の中でスイッチが入った感覚でした。
大学時代、3年生で合格はできましたが、取得するまでの1年半の間は模試でEやD判定を取るような状態でしたが、「負けたくない」という気持ちと、叔父のような社長を、社会に、経済的貢献をしたいという強い使命感が支えになっていました。兄も父も教育者として社会に貢献していたので、自分は「経済的な側面から何かできるはずだ」と考えていました。
「監査法人の外でないとわからない現実」が、IPO支援の原点
──監査法人では、中小企業を幅広く支援されたそうですね?
金氏:はい。トーマツ長野事務所では、業種の垣根なく監査実務を経験できました。製造業の上場企業をはじめとし、IPO準備会社、金融機関の自己査定、医療法人や学校法人(私学、公立)の監査まで、1年目からバリバリ担当させてもらいました。長野でもトーマツベンチャーサポートの活動をすることになり、リーダーとして立ち上げから担当する機会もいただきました。
その後、事業会社でIPO準備の責任者として働く中で、「監査法人の外に出ないとわからない現実」にも直面しました。正直、「こんなに大変なのか」と思いました。未払い残業代の整理、反社チェック、関連当事者取引の解消、規程の整備……当時は相談相手もおらず、手探りでした。あの頃のしんどさが、「はじめのIPO」をつくる原点になりました。
──IPO準備は「探索」の積み重ねだったということですね。
金氏:はい。「はじめのIPO」は、自分が苦労した分、次の誰かが少しでも楽に進めるようにと、ノウハウを詰め込みました。ツールはSaaS形式で提供していますが、単なるシステムではなく、私が「家庭教師」のように伴走するモデルです。実務で本当に困るところに手が届くよう意識しています。
「IPOを楽に」苦労の先に見えた、新しい支援のかたち
──独立を決めた背景には、どんな思いがあったのでしょうか?
金氏:IPOを経験し、一つのゴールは達成しましたが、それ以上に「誰かの苦労を減らしたい」という気持ちが強くなり、独立しました。
最初はエンジニア知識もゼロで、開発も失敗続きでした。でも、エンジニアと協議を重ね、IPO準備の「実務の現場」をサポートする機能と向き合いながら、足掛け4年かけてようやくリリースできました。
──今後の展望についてもお聞かせください。
金氏:IPO準備は、まだまだ属人化の多い「職人芸」のような世界です。でも、もっと標準化し、効率的に進められるはずです。また、昨今は東証グロース市場の上場維持基準の「上場後5年で時価総額100億」という基準も示され、IPOへの志向も変化すると考えています。そのため、「はじめのIPO」の事業を通じて、IPOの新しいスタンダードを創っていきたいと考えています。
同じ志を持つ士業で、より良い未来をつくろう
──最後に、読者へメッセージをお願いします。
金氏:IPOを支援したくても「どこから手をつければいいかわからない」という声をよく聞きます。でも、現場で本当に困るのは、書籍にも出てこないような泥臭い実務対応だと感じています。私自身が経験したからこそ伝えられるノウハウを、「はじめのIPO」に詰め込んでいます。
もし、クライアントの中にIPOの可能性があるなら、ぜひ一緒に取り組みましょう。私の探索の旅はまだ続いていますが、同じ志を持つ士業の方々と手を取り合いながら、より良い未来をつくっていけたら嬉しいです。
先生のご紹介
金 誠智 [Kim Songji]
略歴:公認会計士。監査法人トーマツで中小企業監査を経験後、ベンチャー企業のIPO準備責任者としてM&A、IPO、IR、サステナ開示を経験。「現場の苦労」を痛感し、IPO準備支援SaaS「はじめのIPO」を開発・提供。IPOの新しいスタンダードを創り出し「IPOに『楽』を提供する」をパーパスとして掲げ事業に取り組む。
所在地:東京都中央区日本橋茅場町1-8-1
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