伊藤会計事務所 代表税理士 株式会社エスアンドシー 福岡遺産相続サポートセンター 伊藤桜子

従来の税理士事務所の枠を超えた幅広いサービスでお客様の利益に貢献

―まずは、事務所紹介をお願いします。

伊藤会計事務所は、2008年に福岡市中央区で開業して今年で17年目を迎えました。現在グループ会社のエスアンドシーを含め、約40名の社員が在籍しています。平均年齢は29歳で、20代から40代の若い社員達が活躍してくれています。

伊藤会計事務所では税理士業務全般を、エスアンドシーではクラウド会計を活用した経理アウトソーシングやクラウドシステムの導入サポート、freee会計やマネーフォワードクラウド会計などのクラウド会計の教育事業、さらにはコワーキングスペースの運営など、従来の税理士事務所の枠を超えた幅広いサービスを提供しています。

―平均年齢29歳は業界的にも若いですね!

はい。新卒未経験者採用を積極的に行っているので、このような年齢構成となりました。

―幅広くサービス提供されていますが、事務所の強みはなんですか?

強みのひとつは、クラウド会計システムの導入支援です。

単なるシステム導入にとどまらず、業務フローの見直しと最適な経理業務の構築を行い、お客様のバックオフィス業務を効率化するお手伝いをしています。

また、弊所ではfreee会計、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計と、3つの会計ソフトをメインソフトとして使用しています。お客様のニーズに合わせて使い分けることができ、最善なものを提案できることも強みかなと思います。

―クラウド会計に取り組まれたきっかけは何ですか?

月次決算の早期化を実現したかったからです。会計は情報の宝庫です。月次決算が早くなれば、経営のために欲しい数字の情報が、よりリアルタイムにとれるようになります。

設備投資をどうしようか、人を増やして大丈夫か、無駄な経費はないのか、いつ資金調達すべきか、といった様々な経営判断を、よりスピード感をもってできるようになります。それがお客様の企業経営の大きなサポートになると思い、取り組んできました。

また、月次決算を早期化した後は、クラウド会計とAPI連携できるManageboardやBIツールなどのクラウド財務分析システムを活用して、財務状況の可視化、決算予測、簡易キャッシュフローを提供したり、融資手続などをサポートさせていただいたりしています。

財務面でのサポートは、お客様の利益に貢献するために、これからも注力していきたい業務の一つです。

―これまでの事務所経営の中で苦労された点はありますか?

やはり、採用・定着にはとても苦労しました。

開業から数年は順調に事業拡大を進めていたのですが、社員が10名くらいになるころ、募集しても税理士事務所経験者の応募がなく、業界未経験の社員を採用しても3年と経たずに辞めてしまうという状況に陥りました。いわゆる「10人の壁」ですね。

新しい人材が育たないためにベテラン社員に業務が集中してしまい、その仕事のきつさを理由に辞めていく社員も多くいました。事務所にとって必要な人材を結果的に辞めさせてしまうことになったときはつらかったですね。冬の時代は4〜5年続きました。

当時、繁忙期の平均残業時間が90時間に達することもあり、不本意ながら「残業が多い事務所」として専門学校生の間で有名だったそうです(笑)

―どのように乗り越えてこられたのでしょうか?

人材不足の壁に直面したことをきっかけに、「今残って頑張ってくれている社員のために何とかしなければ」と業務改善に真剣に向き合うようになりました。

かつては、弊所もデジタルとは無縁のアナログな運営をしていたんです。工数管理もきちんとできておらず、マニュアル・教育フローも整っていない非効率な業務体制でした。

そのため、新入社員を雇っても育成が追いつかず、次々と辞めていき、残された社員に業務が集中し疲弊してしまうという負のスパイラルに陥っていました。

この状況を打開するために、まずはペーパーレス化や業務の可視化に取り組み始めました。

―ペーパーレスや業務の可視化は、具体的にはどのようにされていますか?

紙資料をすべてデジタル化し、全ての顧問先について、標準化したルールで保管するようにしました。また、日報入力をkintoneで行い、業務プロセスもkintoneで一元管理し事務所全体でしっかり進捗管理を行うとともに、蓄積したデータをわかりやすいダッシュボードで表示し分析できるようにしました。

この見える化によって、誰が今どんな業務を抱えているのか、どこで躓いているのかが明確になりました。非効率な業務を効率化したり、人ごとや月ごとに偏っていた業務バランスを見直したことで、結果として残業時間を大幅に削減することができました。

現在は、繁忙期でも、月の平均残業時間を10時間以内に抑えられるようになり、社員の定着率も大幅に向上しました。それだけでなく、残業が少ない事務所ということで、経験者未経験者問わず、優秀な人材を採用できるようになっています。

―今現在、力をいれていることはなんですか?

今最も力を入れているのは、人材育成ですね。

よい人材が入ってくれるようになったとはいえ、サービスの品質向上には社員の成長は不可欠だと思います。ですから、業務時間内でしっかりと研修の時間を確保しています。

特に会計ソフトについては、freee会計、マネーフォワードクラウド会計、弥生会計の3つをすべてマスターできるよう、グループ会社のエスアンドシーで開発した「クラウド会計担当者養成プログラム」を用いた研修を実施しています。

また、業務の標準化とマニュアル整備によって、新卒未経験者でも迷わず業務ができる仕組みづくりを行い、その仕組みの中で自然と効率的な業務のやり方を覚えていくということを目指しています。

―研修がうまくいくコツがあれば教えてください。

研修の際に、ただ動画を見るだけだったり聞いているだけだと、なかなか身につきませんので、インプットするだけでなくアウトプットを同時に行うようにしています。実際に手を動かしてもらったり、テストで確認したりしています。そして、実際の記帳をする前に、デモ記帳も行いフィードバックを行っています。

現在は、自社で試行錯誤してきた研修のノウハウが同じ士業の方のお役に立つのではと考え、外部向けの養成講座の提供もはじめました。この講座はfreee会計とマネーフォワードクラウド会計に分かれています。どちらも全4講合計16時間の講習を1か月間かけて実施します。実際にデモ画面を操作しながら受けていただくので、実践的な内容となっています。

―税理士業界の課題として感じられていることはありますか?

業界全体の課題としては、やはり、人材不足が最大の課題だと感じています。

少子高齢化や税理士受験者数の減少に加え、税理士事務所の仕事が複雑で難しいというイメージ、長時間労働というイメージが定着していることから、人材の確保は、今後ますます難しくなっていくと思います。

これらに加えて求職者側は、ワークライフバランスや教育体制、スキルアップを重視する傾向があるので税理士事務所もこれらのニーズに対応していかなくてはいけません。

幸いにも弊所は、採用と育成に力を注いできた結果、多くの方に応募していただけるようになりました。採用と育成には時間とコストがかかりますが、人への投資は、従業員満足度を上げ、いい人材の確保と定着はサービスの価値を上げます。その結果、顧客満足度が上がり、新しいお客様を紹介していただいたり、報酬額が上がるといった結果につながり、それをまた人材投資に充てられる、という良いサイクルを生み出していくものだと考えています。

―ふらっとを見ている方へのメッセージをお願いします

クラウド会計で困っている方や、クラウド会計を今後試してみたいと思っている方、また業務管理に困っている方がいらっしゃいましたら、お力になれることがあると思いますので、ぜひお声掛けください!

先生のご紹介

伊藤会計事務所/株式会社エスアンドシー/福岡遺産相続サポートセンター
税理士 伊藤桜子
神戸大学法学部卒業。2008年福岡市にて伊藤会計事務所を開業。
業務改善を推進し、ペーパーレス、記帳代行業務の製販分離、クラウド会計の導入、kintoneによる業務一元管理などを実現してきた。また、社員が楽しく多様な形で働ける職場づくりのために、スーツの廃止、フレックス制度、テレワーク制度を導入。
所在地 福岡県福岡市中央区薬院3-16-26 西鉄薬院ビル5階
伊藤会計事務所 https://ito-kaik.com/
株式会社エスアンドシー https://sc-keiri.co.jp/
福岡遺産相続サポートセンター https://ito-kaik.com/souzoku-support/

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