真宗宏至税理士事務所【税理士】真宗 宏至
家業の廃業、過酷な創業期を越えて——30年の現場経験を持つ税理士が語る「経営支援の本質」
2026-08-12
家業の廃業を経て生まれた創業への決意
—— まずは、先生が税理士を目指されたきっかけからお聞かせください。
真宗:実は、最初から「税理士になりたい」という強い志があったわけではありません。大学卒業後に勤めていた会社を退職する際、「資格の勉強をします」と周囲に伝えたことがきっかけでした。経済学部出身だったこともあり、税理士試験の勉強を始め、3科目までは比較的順調に合格できました。
ところが、その頃に昭和初期から続く実家の菓子メーカーが深刻な経営危機に陥りました。再建を手伝うために勉強を中断しましたが、バブル崩壊後に新設した工場の借入が重くのしかかり、最終的には廃業を決断することになったのです。その経験を通じて、「いつか自分の力で事業を成功させたい」という想いが芽生え、20代で資金も人脈もない中でしたが、半ば勢いでお菓子事業を立ち上げたのが経営者としてのスタートです。
—— 創業当時は、休みもほとんどなかったそうですね。
真宗:本当にお金も設備も何もない状態からのスタートでしたから、「過酷」という言葉だけでは足りないくらいの毎日でした。長野のお客様のもとへ車で6時間かけて行き、夜中まで打ち合わせをして、その後また6時間かけて車で戻る。車の中で少し仮眠して翌日も現場に立ち、土日も休まず働く生活です。年間350日ほど仕事していました。
大変でしたが、「自分で決めた道だから途中で諦めたくない」という一心でした。資金繰りに苦しみ、失敗も数え切れないほど経験しましたが、その10年間があったからこそ、今は数字だけでなく経営者の気持ちまで理解できるようになったと思います。
コロナ禍で見つけた「利益を生む経営」の本質
—— 順調に成長していた事業が、コロナ禍で大きな影響を受けたそうですね。
真宗:有名店との取引も増え、事業が軌道に乗った矢先にコロナ禍に直面し、店舗の休業やイベント中止が相次いで売上は一気に落ち込みました。「この仕事をあと10年続けられるのだろうか」と、本気で将来を考え直した時期でした。
そこで改めて自社の財務を分析すると、問題は売上減少だけではありませんでした。過剰な在庫や設備投資が利益を圧迫していたのです。不要な資産を整理し、在庫管理を徹底した結果、売上規模は縮小しても利益率は改善しました。売上だけを追うのではなく、「利益が残る経営」をつくることの大切さを身をもって学びました。
—— その改善が、後のM&Aにもつながったのですね。
真宗:はい。会社の体質を改善した上で、一般的な株式譲渡ではなく「不動産と事業を切り離すスキーム」を採用し、本業の収益性を明確化したんです。利益といった定量的な要因だけでなく、ホームページ経由の新規顧客からの問い合わせの多さなど定性的な要因を組み合わせた結果、最終的には当初提示額の約9倍で事業譲渡を実現できました。経営実務と税務知識がひとつに結実した瞬間でしたね。
また、コロナ禍で外出が制限された時間を活用して大学院に進学しました。すでに合格していた3科目に加えて、残り2科目の免除要件を満たし、無事に税理士資格を取得しました。会社を新社長へ引き継いだ際に「これからは社長ではなく、真宗先生ですね」と呼ばれた時は、重荷がすっと下りると同時に晴れやかな気持ちになりましたね。
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30年の現場経験が支える伴走型の経営支援
—— 現在の事務所での支援体制についてお聞かせください。
真宗:現在は1人で事務所を運営しており、M&Aや事業承継の相談を中心に、オンラインも含めて月に7〜8件ほど経営相談をお受けしています。私自身が約30年間経営者として会社を成長させ、売却まで経験したからこそ、理論だけではなく実体験に基づいた提案ができると考えています。
大切にしているのは、会社が本来持つ価値を最大限に引き出すことです。答えを押し付けるのではなく、対話を重ねながら経営改善や企業価値向上、M&Aでの事業譲渡まで一貫して伴走し、売り手・買い手双方が納得できる着地点を目指しています。
自らM&Aで事業譲渡した経験があるからこそ、業種や世代を問わず、実践的な相談相手になれると考えています。
—— AIの進化とこれからの税理士業界のあり方については、どのようにお考えですか?
真宗:私自身も文章の整理や情報収集などでAIを活用していますが、AIはあくまで補助ツールです。経営者が抱える悩みの本質を引き出し、一緒に考えながら最適な判断へ導くことは、人にしかできません。
記帳などの定型業務が自動化される時代だからこそ、税理士には第三者として客観的な視点を示し、経営者の意思決定を支える役割がこれまで以上に求められると考えています。そのため、私は自身の経営経験を生かし、数字だけではなく経営者の想いにも寄り添う伴走型の支援を続けていきたいと思っています。
魅力ある会社でなければ事業は引き継がれない
—— 中小企業の「後継者不足」や「事業承継の難しさ」という課題については、どのようにお考えですか?
真宗:少し厳しい言い方になりますが、後継者がいない理由の一つは「会社に魅力がないこと」です。親が毎日苦しそうに働いている姿を見て育てば、「継ぎたい」と思えないのは当然です。
事業承継を成功させるには、まず会社の収益性や働き方を改善し、「この会社なら未来がある」と思える状態をつくることが重要です。経営者自身が時間にも心にも余裕を持てる会社づくりが、結果として次世代への円滑な事業承継につながります。
—— そのために必要な準備とは何でしょうか?
真宗:一番大切なのは、早い段階から出口戦略を考えることです。病気や突然のトラブルが起きてからでは、選択肢は限られてしまいます。
元気なうちから事業承継やM&Aを視野に入れ、客観的な第三者と一緒に会社の課題を整理していくことが重要です。経営と税務の両方を理解している立場だからこそ、その橋渡し役を担いたいと思っています。
まずは最初の一歩として「気軽に相談できる関係」を
—— 最後に、読者へのメッセージをお願いします。
真宗:M&Aや事業承継は、決して特別な会社だけの話ではありません。「まだ早い」「うちには関係ない」と思わず、少しでも気になることがあれば早めに相談していただきたいですね。
第三者が入ることで、長年抱えていた課題が意外なほどスムーズに整理されることも少なくありません。私は机上の理論だけを語る税理士ではなく、30年間現場で悩み、失敗し、会社を成長させてきた元経営者です。その経験を生かしながら、これからも経営者の皆さまに寄り添い、一人ひとりに合った経営支援を続けていきたいと思います。ぜひ気軽にご相談ください。
先生のご紹介
真宗 宏至 [MAMUNE HIROYUKI]
略歴:税理士。昭和初期から続く家業の経営に参画し、廃業の決断を経て20代で自ら菓子事業を創業。年間350日稼働という過酷な創業期を強い意志で乗り越え、従業員20名規模へと成長させる。
コロナ禍における徹底した在庫管理や経営合理化を経て、事業売却(M&A)による出口戦略を成功に導く。この経営経験をもとにコロナ禍中に大学院で学び、税理士資格を取得。現在は、自身のリアルな事業経営とM&Aの実体験を強みに、第三者の視点から行う戦略的アドバイスや次世代経営者の支援を得意とする。
所在地:東京都墨田区錦糸2-14-7 ヘクセンハウスビル6F
HP:https://www.ma-advising.com/