Kinsho 税理士/社会保険労務士事務所【税理士/社会保険労務士】金正 有史
対等なパートナーとして経営者を支えたい——国税調査官からの独立を決意した士業の歩み
「税務調査のプロ」としての経験を生かして独立
—— 2025年10月に独立されるまで、国税局に勤めていらっしゃったそうですね。
金正: はい。大阪国税局に24年間勤務しました。大学卒業後に採用されてから、ほぼ一貫して税務調査の業務に携わってきました。
—— 国税専門官を目指した理由は何だったのでしょうか?
金正: 正直に申しますと、国税専門官を目指していた訳ではなく、関西が好きで出たくないという想いから、転勤の少ない公務員を目指しました。その中で結果的にご縁があったのが国税専門官でした。
刺激と重圧が交錯する、税務調査での日々
—— 実際に国税局で働いてみて、イメージとのギャップはありましたか?
金正: はい。 想像以上に縦社会でした。それに私がイメージしていた「定時退社、土日休み」という公務員のイメージとはかなり違い、終電で帰る日もありましたし、土日出勤も珍しくなく、また、宿泊を伴う地方への出張もありました。
国税局では査察部門に在籍し、裁判所の令状を持って企業に立ち入り強制調査を行う、そんな、普通では決して経験できない世界を体験できたことは、私にとって大きな財産となっています。査察部門での調査は、明らかに脱税などの問題がある企業が対象であり、厳しい対応が求められるのは当然だと思います。
一方で、税務署で行う通常の税務調査では、明確な脱税が見つかっているわけではなく、「申告内容に問題がないか」を確認することが目的です。そうした中で、社長に対して厳しい指摘を突きつける立場に立つことに、次第に心の負担を感じるようになりました。
—— 具体的には、どのような点を負担に感じていたのでしょうか?
金正: 私はもともと、「対話を重ねながら相手を理解したい」と考えるタイプです。しかし税務調査の現場では、厳しい指摘を端的に伝えなければならない場面が多くあります。言わなければならないことだと頭では理解していても、社長の背景や想いを知れば知るほど、その言葉を伝えることが次第に辛くなっていきました。
国税調査官として果たすべき役割と、一人の人間としての感情。その狭間で葛藤することが多かったです。
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税務調査で感じた、経営者と税理士のコミュニケーション不足
—— 税務調査を通して、別の気づきもあったとか。
金正: はい。 税務調査では、経営者と税理士のコミュニケーション不足を強く感じました。特に大規模事務所では担当者任せで、税理士本人が経営者と年1回しか会わないケースも多い。その結果、社長の真意や考えが税理士に十分に伝わっておらず、税理士の考えのみで調査が進められてしまうことがありました。例えば、社長としては一刻も早く調査を終わらせたいと思っているにもかかわらず、税理士が徹底的に税務署と「戦う」という姿勢を崩さないために、調査が不必要に長期間に及んでしまうといった事例も見てきました。
—— その気づきが、独立を考えるきっかけにも繋がったのでしょうか?
金正: そうですね。不安を抱えたままで、十分に相談ができない経営者も少なくないと思います。現に税務調査の際に社長から「税理士を変更したいのだが」という相談を複数回受けた経験もあります。その状況を見て、「自分なら税務調査の経験を活かし、税理士として寄り添えるのではないか」と考えるようになりました。
スタートアップ企業の税務と労務を「ワンストップ」で支えたい
—— 社会保険労務士の資格も取得されているんですね。
金正: はい。国税局在職中に取得しました。企業に寄り添った支援を行うには、税務だけでなく、労務の知識が不可欠だと感じたからです。結果的に、独立後は税務と労務をワンストップで支援できる形になりました。
—— 今後の事務所像についてお聞かせください。
金正: スタートアップ企業の支援に力を入れたいですね。一緒に成長していける関係が理想です。クラウド会計による自計化支援を行っていき、経営者が自分で数字を判断できる状態を作ることが、長期的には一番の支援だと思っています。
正直なところ、 規模の拡大を目指すつもりはありません。また、「先生」と呼ばれるのも苦手なので、経営者と対等な立場で、一緒に考えるパートナーでありたいと思います。今後は融資や財務領域にも踏み込み、必要に応じて専門家をつなぐ窓口になりたいです。
経営者が求めている士業像は「本音で話せる相手」
—— 最後に、読者の方々へのメッセージをお願いします。
金正: 税務調査の現場に長く携わる中で、経営者たちの不安の多くは、制度や数字そのものではなく、本音を話せる相手がいないことだと感じました。調査の場で胸の内を語られるたびに、日常的な対話の大切さを実感してきたのです。
税理士や会計士は、専門性ゆえに「先生」という立場で見られがちです。しかし、経営の現場では、上から答えを示すのではなく「同じ目線に立って一緒に考えられる関係性」が求められていると私は考えております。
もし今、顧客との距離感や関わり方に違和感を覚えているなら、一度、立場や肩書きを外して向き合ってみてほしいです。これからの士業像について、新たなヒントが見えてくるかもしれません。
先生のご紹介
金正 有史 [KINSHO YUJI]
略歴:税理士・社会保険労務士。
大阪国税局で24年間勤務し、税務調査に従事。調査経験を通じて、企業の社長と税理士のコミュニケーション不足の実態を目の当たりにし、2025年10月「税務調査での経験を活かした企業支援」を行うべく独立開業。国税局在職中に取得した社会保険労務士資格も活かし、税務と労務のワンストップ対応でスタートアップ企業への支援を中心に事業を展開している。
所在地:大阪府堺市堺区南旅篭町西3丁8番6号