ミライズ税理士法人【税理士】楠美 智弘
「顧客数」より「深い信頼関係」を追及する税理士の経営論
マネーフォワード株式会社とふらっとのコラボレーション企画がスタートしました。
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、バックオフィスのDX化を推進するマネーフォワードと、士業の情報発信を支えるふらっとが特別企画を実施します。
デジタル化が加速する中、士業の皆さんがどのようにテクノロジーを活用し、業務効率化やクライアントへの価値提供を実現しているのか。
ふらっとでは、その変革のプロセスを掘り下げるインタビューシリーズとして、今回、ミライズ税理士法人 楠美 智弘 氏に取材しました!
「かっこいい専門家」との出会いがキャリアの原点
—— まずは、税理士を目指したきっかけについてお聞かせください。
楠美: 大学3年生の時に体調を崩した際、当該分野の権威という医師に出会ったことが最初のきっかけです。体調不良の原因がわからず大病院をいくつも回った結果、専門医に診ていただくことになったんです。
その先生は専門性の高さとは対照的に、すごくフランクで話しやすい方でした。実績があるからこそ、砕けた感じでも逆にかっこよく見える。その姿を見て「自分も専門家になりたい」と思ったんです。
—— 医師ではなく税理士を選んだのは、どのような理由からですか?
楠美: 税理士を選んだのは「オーナー経営者との関わりが深く、経営に寄り添える仕事が多い」というイメージがあったからです。大学では経済学部だったので、会計士か税理士の二択だったのですが、自分が得意なフィールドで勝負することを考えると、税理士の方が向いていそうだなと思ったんです。
ただ、周りに税理士を目指す人があまりいなかったので、試験勉強の時間は本当に大変でした。朝7時から予備校の閉館時間まで、同じく税理士志望の友人と一緒に勉強していたんですが、正直、点数はあんまり伸びませんでしたね。
それでも、当時の予備校には今活躍している優秀な人たちがいたので、その中に身を置いていると自分の実力を客観的に認識できたんです。自分が「どのポジションにいるのか」「何が不足しているのか」に気づくことができ、コミュニケーションや別の角度から専門性を磨く道を選ぼうと思ったんです。
顧客数を限定し「魅力的な経営者と深く向き合う」経営スタイルを貫く
—— その後のキャリアはどのように進んでいきましたか?
楠美: 大学院を卒業して大きな税理士法人に入り、相続税や事業承継といった「資産税」の分野を中心に経験を積んできました。独立後も、その専門分野を軸に仕事を続けています。
私は、オーナー経営者と深く関わって仕事をすることに一番やりがいを感じるので、規模を大きくして顧客数を増やすのではなく、あえて絞りこみ、「魅力的な経営者と深く向き合う」スタイルを選びました。
—— 一般的な税理士事務所とは逆の戦略ですね。
楠美: そうですね。ただ、その分、引き継ぎが難しいという課題には直面しています。私の仕事のやり方は職人的で、若い職員には再現しにくいんです。とはいえ、離職率はほぼゼロなんです。経営理念や社員の仲間意識をすごく大切にしていて、毎日、幹部と30項目ほどの経営理念について意見交換をしていますし、社員旅行で海外にも行きます。同じ方向を向いて仕事をしてもらえれば、成長スピードは確実に上がるという自信があります。
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コミュニティーに参加しインタビューを受ける
「成長意欲」と「多様性」を両立した組織づくり
—— スタッフの平均年齢が30歳と若いそうですが、採用時には何を重視されていますか?
楠美: 「成長意欲があるかどうか」を重視しています。ルーティンワークを好む方や、そこそこの生活ができれば良いという方とは、ミスマッチが起きてしまうと考えています。
とはいえ、「多様性も重視」しており、時短勤務のスタッフもいます。たとえば、育児で時短が必要だけど、成長志向があって会社の方向性を応援してくれるなら全然かまわない。中には、自分の成長よりチームや仲間の成長を応援したいという方もいますが、そうしたメンバーも不可欠だと考えています。
面接はすべて私が対応していますが、本当に人間性の良い人ばかりが集まるんです。考え方が異なる方もいるかもしれませんが、それでもうまくやっていける。「人間関係で大きなトラブルが一つもない」というのが正直な実感ですね。
「仕組み」よりも「人と熱量」で事業を始める
—— 事務所では補助金事業にも取り組まれているそうですが、ご自身で始められたのですか?
楠美: いいえ。「補助金が好きで自分からやってみたい」というメンバーがいて、その熱量から事業化しました。私たちは「メンバーがやりたいことをやってみよう」というスタイルなんです。相続税と補助金は直接的なシナジーがないのですが、素敵なメンバーと出会ったから事業を始めた。「仕組みで考える」のではなく「人と熱量を優先する」。そのため、不動産賃貸仲介事業やM&Aにも取り組んでいます。
—— そのように事業を広げていく判断基準はありますか?
楠美: 実は、戦略的な判断基準というより、その時々で「良い人と出会えるかどうか」なんです。たとえば、不動産賃貸仲介事業を始めたのも、本当に素敵なメンバーと出会ったから。人ありきで、その人がやりたいことをやってみようという流れですね。
「最高クラスの品質」でお客様との深い信頼関係を築く
—— 事務所の今後のビジョンについて、お聞かせください。
楠美: 正直に言うと、地域一番とか売上目標とか、そういう具体的な数字は設定していません。大手にいた時代はノルマがあって、単発の仕事をたくさん抱える仕事をしていました。その時に、数字を追うことでお客様との相違が生まれたり、働く人たちの不満が出てきたりすることがわかったんです。だからこそ、数字よりも「お客様と深く長い信頼関係を作ること」を、一番大切にしています。
—— 事業展開をする際に、どのようなことを大切にされていますか?
楠美: とにかく「品質で勝負すること」ですね。 それが、お客様との深い信頼関係を作り、長く付き合っていく唯一の方法だと考えています。最高クラスの品質が担保できるなら、新しい領域にもどんどんチャレンジできると思います。
現在、地域未来投資促進税制や中小企業経営強化税制など、投資に関する減税に特化した分野で活躍しているメンバーもいます。彼らが自身の専門性や「好き」を突き詰めて、それが質の高いサービスとして事業を成立させているのであれば、事務所の看板に掲げている「相続・事業承継」という領域にこだわる必要はないと考えています。
自分の「専門性」を信じて、仲間と共に成長しよう!
—— 最後に、税理士や会計士など、同じ業界で働く人たちへのメッセージをお願いします。
楠美: 売上目標を掲げる事務所も多いですが、お客様との信頼関係を追求する方が、長期的には成長スピードが上がると思うんです。それに気づくと、働き方も変わりますよ。
「自分の専門性」を信じ、そこに熱量を持つメンバーを集めて一緒に深い関係を作っていく。その過程で、自分たちも成長していくという事務所があってもいいんじゃないかなと思っています。そして、そういう事務所同士が協力し合えば、小さな事務所の力だって確実に大きくなるはずです。
先生のご紹介
楠美 智弘 [KUSUMI TOMOHIRO]
略歴:税理士。大学3年生で「かっこいい専門家」との出会いを機に税理士を志す。大学院卒業後は、大手税理士法人にて資産税(相続税・事業承継)分野を中心にキャリアを積む。独立後も同分野を専門としながら「経営者との深い信頼関係構築」を経営理念の中心に据えている。補助金事業や投資促進税制など、メンバーの成長意欲を重視した多角化を推進中。現在、名古屋・静岡・東京に事務所を展開している。
所在地:
■ 名古屋本社
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