「数字に現れない部分」こそが真の価値——40代で業界入りした税理士の挑戦

「企業の仕組みを知りたい」という好奇心が税理士への原点

—— まずはご経歴と現在の活動について教えてください。

森下： 税理士を目指し始めたのは33歳のときで、本格的に業界に入ったのは40歳を過ぎてからです。一般的なキャリアから見ると遅咲きかもしれませんね。

現在は独立したばかりで、法人税を中心とした顧問業務に加え、これまでの経験を活かして資産税、特に事業承継や相続税のサポートに力を入れています。

—— 33歳で税理士を目指されたとのことですが、どんな転機があったのでしょうか？

森下： 新卒で入った会社で営業職をしていた頃、取引先企業の財務諸表やお金の流れをまったく把握できていないことに気づいたんです。「企業はどうやって継続しているのか？」という本質的な疑問が湧き、それを解き明かしたいという好奇心が芽生えました。

最初は国税専門官を志しましたが、叶わず社会保険庁に入庁。しかし、企業の仕組みを理解したいという思いが消えず、8年かけて税理士資格を取得しました。

「やらなかった後悔より、やった後悔」を選び、独立という挑戦へ

—— 独立を決める上で、どんな課題や試行錯誤がありましたか？

森下： 実は独立したのは先月で、まさにゼロからのスタートです。年齢的にも慎重になりましたが、「やらなかった後悔より、やった後悔を選ぼう」と決めました。妻からのプレッシャーも少しありましたが（笑）

業界に入ってから試行錯誤したのは、業務の幅を広げることです。最初は一般的な法人税務を中心に担当していましたが、自分の強みを広げたいと考え、現在は資産税専門の事務所のお手伝いをしながら、専門分野を広げています。法人顧問を継続しつつ、不足していた事業承継や相続税といった分野のカバー範囲を広げている最中です。

AI時代に求められる、“数字に現れない思い”を伝える価値

—— 独立後、価値観やお客様への向き合い方に変化はありましたか？

森下： 私が大切にしているのは、「挑戦する人を支えたい」という姿勢です。私自身が遅いスタートを切ったからこそ、同じように挑戦する経営者の方の背中を押したい。

AIの進化で、数年後には税務計算の多くが自動化されるでしょう。そのときに残るのは、数字以外の部分です。資産税の仕事では、経営者の思いや家族の感情と向き合う場面が多い。事業承継であれば、先代の思いをどう次に伝えるか。相続では、家族の気持ちにどう寄り添うか。そうした“数字に現れない部分”こそが、これからの税理士の真の価値になる、と思っています。

創業から相続まで。経営における「生涯のパートナー」を目指して

—— 今後の取り組みや展望を教えてください。

森下： 今は、紹介や専門家ネットワークを通じて顧客開拓を進めています。今後は、事業の“始まりから終わりまで”、つまり創業期の経営サポートから、事業承継、相続といった出口まで、一貫して寄り添える事務所にしたいです。

また、業務面では、最新のAIツールを導入し、業務効率を高めながら、より多くの時間をお客様との対話に使えるようにしていく予定です。AIが得意な効率化はクラウド会計や外部ツールに任せ、人にしかできない関係性の構築に注力したいですね。

—— どのような方を積極的に支援していきたいですか？

私自身がチャレンジ精神を大事にしているため、同じく事業にチャレンジしている若手経営者を中心にサポートしたいと考えています。司法書士の先生方とも連携し、勉強会などを通じて、そうした若手のコミュニティを創っていきたいですね。

変化を恐れず、共に未来を語り合いましょう

—— 最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。

森下： 多くの士業の先生方は、日々の業務の中で、どうしても「数字」と向き合う時間が多いと思います。しかし、これからの時代、私たちは「数字の裏にある思い」をどれだけ汲み取れるかが問われています。

私自身、40代での独立という“遅咲きの挑戦”の最中です。同じように、「一歩踏み出したい」「現状を変えたい」という強い思いを持つ先生方と、ぜひお会いしたいです。お互いの試行錯誤を共有し、AI時代を生き抜く新しい税理士像について語り合いましょう。

皆さんと直接お会いして語り合える日を楽しみにしています。