はてなベース株式会社 代表取締役 世戸口 逸人

「飽くなき好奇心を満たし続ける」 会計士のキャリアからはちょっと外れた、“起業家”としての道


会計処理の連携に特化したkintone開発が得意

 

――まず、会社の事業内容をお伺いしてもよろしいですか?

弊社はてなベースは、会計士のチームとエンジニアの開発チームの二つを持っております。私はもともと会計畑の出身なので、私たち会計チームがクラウド会計の導入支援をしていて、開発チームはkintoneをはじめとするCRMの導入を中心にやっています。

業務として一番得意な領域は会計ソフトとkintoneのようなCRMツールの連携です。kintoneから請求書発行を自動化するとか、仕訳登録を自動化するといった会計処理の連携に特化したkintoneの開発が得意です。

最近は新規事業としてバックオフィスの業務改善を試みるDX担当者や新卒向けの研修を長時間の尺にして動画として展開する研修事業も行っています。

今は2期目に差し掛かっていますが、今期はこの研修・教育事業を伸ばしていきたいなと思っています。それ以外にも、面白そうなものがあったらどんどんやっていこうかなと。

 

飽くなき好奇心を満たし続けるには起業するしかなかった

 

――2023年の2月にはてなベース株式会社を立ち上げたということですが、起業しようと思ったきっかけはありますか?

もっと熱中できるものを見つけたかったというのが一つの理由です。私は中高一貫の男子校に通っていて、そこでは皆ずっと勉強ばかりしている学校だったんです。そこで受験勉強をせっせと頑張っていたのですけど、大学受験が上手くいかなかった。浪人してもう1回チャレンジしたんですけど、それでも蓋は開かなかった。蓋されたマグマみたいな感じでその発散場所を見つけたくて仕方なくて、それで始めたのが会計士の受験だったんです。「受験の借りは受験で返す!!」なんてことを言ってました..。短絡的な思考だったなと思います、特に当時の私は…。

大学4年生の時に公認会計士試験に合格して監査法人に入所したのですが、監査の仕事にはあまり打ち込めず…。仕事で精を出そうと思っていたのにモチベーションを維持できなくなってしまって、色々模索しているうちに転職してベンチャー企業で人事とか経理の仕事をするようになりました。その頃から、ベンチャー企業での事業サイドで仕事をすることにやりがいを見出すようになりました。

――勉強や受験のような熱中できたものと、そうでないものがあったんですね。

ベンチャーに転職後、なんでこんなに満たされないんだろうって考えた時に、自分自身を主語にして、「自分自身が責任の主体となるようなところで、今までになかったものを作る、面白いことをする」っていうことに興味を持ったんです。

私は好奇心が人一倍強い方だと思っていて、何かできなかったことができるようになるとか、見えなかったものが見えるようになる瞬間が好きで、飽くなき好奇心を満たし続けるには起業するしかなかったというところです。

――起業する時、「怖いな」とか「失敗したらどうしよう」みたいな気持ちってなかったですか?

あまりなかったです。恐怖心よりも好奇心が勝っちゃいましたね…。でも、「会計士だからリスクが低い」みたいな考え方ではないです。

会計業界で「起業して失敗しても監査法人に戻ればいいから安心」とか言う人はけっこういて。そういう考えは、組織を持って事業を立ち上げようとする士業であれば捨てるべき考えだと思います。

監査法人にいたので自分で事業を創るといった、いわゆるビジネスサイドの経験はなかったので、一度や二度は失敗するだろうと思っておりました。リスクがあるとか失敗するっていうのは前提にあって、失敗しても取り返しのつかない失敗でなければ問題ないかなと思ってました。あまり怖くなかったですね。

 

もっと苦労すると思っていた

 

――実際に事業を始めてから、辛いと感じたことや思っていたものと違ったという経験はありましたか?

それはあんまりないですね。もし挙げるとするなら、起業というものはもっとしんどくて苦労するものだと思っていました。起業してからは全ての責任が自分の下になったので、全力で頑張れたんです。

人よりアクション量が多くチャレンジの回数が多いことは私の強みだと思っていますが、起業してからは朝から晩まで動いていたので、たくさん蒔いたタネの中から芽吹く種は芽吹くし、それに伴い案件を受注する確率も上がっていったので、意外と上手くいったなっていうのがここまでの正直な感覚です。

もちろん、「足元のキャッシュがめっちゃ減ってる!」というような一時的にしんどい時期もあったんですけど、寝れない夜が続くみたいなことはあまりなかったです。

あと、会計畑にいてから起業してよかったなと思うことは、同じ時期に起業した会計士達が何人かいて、その人たちから良い影響を受けることが多かったことです。うちの何倍もうまくいってるんだろーなーと思ったり、プレスリリースを見て勝手にライバル意識が芽生えています。

高校生の時、受験勉強でライバル意識していた友人に勝てなかったという経験があったので、一度「この人には勝つ!」って決めた相手には絶対に勝たなきゃいけないっていう使命感を持つようにしています。

中学受験して中高一貫校に通って大学受験して、競争社会に入ったら勝ち抜いてなんぼみたいな、良くも悪くもそういう極端な価値観が刷り込まれているのは、起業して戦々恐々とした毎日を送っている今も変わらないかもしれないです。

――諦めずに続けて実際に勝っていけるっていうのは本当にすごいですよね!事業を進めていく中で、やりがいや楽しさはどういう時に感じますか?

仕事のやりがいは、自分たち(=はてなベースという法人格)で事業を作っていく感覚にあります。追いかけていた大きな案件が決まったり、メンバーがフルコミットになってくれるようになったり。先ほどお話ししたところにも通じますが、好奇心の充足を組織として感じられるとワクワクします。

あとは、事業計画を立てている時「このままのペースでいくと今期これぐらいいくのか、じゃあ余ったお金で何をしようかな」なんて考えていると、「起業してよかったな、自由だなあ」と感じますね。

はてなベースって少数精鋭のチームなんですけど、私含めて、いい意味で変なメンバーが多いんですよ(笑)。デザイナーなのにエンジニアリングをしていたり、コミュニケーションは難ありだけど実はすごい特化スキルを持っているとか。

はてなベースという”秘密基地”に集まってくるメンバーが自己実現を果たしていると感じる瞬間も私はすごい幸せです。

確かに足元のお金の心配はありますけど、でもやっぱり不安より好奇心が勝っちゃうんですよね。潰れなければいいかなくらいの感覚で前に進んでいます。

 

好きなこと、得意なことを徹底的に伸ばす集団でありたい

 

――監査法人やベンチャー時代の経験で今に活きていることはありますか?

そうですね、自分は得意じゃないものを伸ばすことはできない人間だということが分かったのが監査法人で、その発見は役立っています。Excelでの作業とか、上から言われたことを高い完成度で細かくこなすっていうことが徹底的にできなかったんです。直そうと頑張っても直らなくて。

得意なことや好きなことだけに集中していれば自己実現を果たせる場所って必ずあると思っています。そういう場所をはてなベースという秘密基地で作ろうと決めています。好きなことや得意なことを徹底的に伸ばす集団でありたいです。

 

ふらっとをビジネスとしての成果に結びつく場に

 

――ありがとうございます。すごくいい会社ですね!!
最後にふらっとについてお伺いします。世戸口さんはふらっとの運営メンバーとしてご参加いただいていますが、どういった経緯で関わってくださるようになったのでしょうか?

はい、ソラボの手島さんと田原さんがふらっとを立ち上げるという話を最初に私にしてくれて、会計士の友だちが多かったので最初の集客をさせていただきました。20人くらい私が集めたので、手島さんに感謝されたいですね!(笑)

――今後ふらっとでやりたいことや目指したいコミュニティ像はありますか?

そうですね、ふらっとに入ってくれる税理士・会計士って独立している人が多いと思うんですけど、彼らが一番求めているのって、最初の営業とか協業パートナーの発見なんじゃないかなと思います。

課題を共有することや仲間ができるというだけではなく、しっかりとビジネスとしての成果に結びつく場所になってくれたら嬉しいなと思います。

――ふらっとへの参加を検討している方に一言お願いします!

参加しておけば何かしらいいことがあるよっていうぐらいの感覚を持っていただけたら嬉しいです。ふらっとは今まで体験したことのないような提案をしてくれる場所だと思うので、とりあえず参加しておけば、自分の想像の範疇を超えた出会いやきっかけ、ビジネスの始まりがあると思います。

種を巻いてから芽吹くまでのスピードが上がると思うので、まずはいっぱい種を蒔けるふらっとに参加してもらえればよいと思います!

先生のご紹介

愛知県小牧市生まれ。2019年、慶應義塾大学在学中に公認会計士論文式試験に合格。大手監査法人で監査実務に従事したのち、飲食業界の会計税務を専門に行うベンチャー企業でバックオフィス業務全般を経験。
また、同時期にベンチャー企業の経理及びDXプロジェクトを業務委託にて4社経験。GASを使った債務管理の効率化やAPI連携を使ったSaaS間の業務非効率の解消を行う。
2023年、CRM導入支援とクラウド会計の導入を専門に行うはてなベース株式会社を設立。同年11月、田村直大公認会計士税理士事務所を田村と立ち上げ、今に至る。趣味はお酒を飲むことと銭湯に行くこと。高円寺をこよなく愛する27歳。

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