こだま税理士事務所【税理士】児玉 光史
中小企業の未来を動かす“財務の地図” ──国税30年・倒産1000件から生まれた「TB思考®」
2025-12-5
中小企業を“広く深く”知るために選んだ国税の道
—— まずは、キャリアについてお聞かせください。最初の就職先が国税庁とのことですが、どのような経緯でその道を選ばれたのでしょうか?
児玉: 大学時代は公認会計士を目指していましたが、学ぶうちに「自分はもっと中小企業の経営を支援したい」と思うようになったんです。
というのも、祖父がパチンコ台を発明し、自らパチンコ店を創業した“発明家であり経営者”でした。家族で長く支えてきた店が、家族間の事情からやがて廃業してしまったと知ったとき、私は保育園の送り迎えをしてくれた店のお姉さんたちの顔が浮かびました。
「事業が続かなくなると、こんなにも多くの人が困るのか」
この実感が、中小企業を守りたいという私の原点になっています。
税理士だと関われる企業は限られますが、国税専門官として採用され、税務署にて中小企業の現場に向き合ってきました。
必要に応じて国税局とも連携しながら、法人・個人・資産・徴収の4分野すべてに携わり、気づけば30年。
これら4分野を現場で深く経験したケースは全国でもごく少数で、この視点が今の中小企業支援の核になっています。
—— 幅広い経験を積まれたのですね。
はい。国税でいろいろな実績を積んだ後、退職して税理士になりました。子どもが独立したタイミングで、自分の原点である“中小企業を支える”仕事を現場の最前線でやろうと決めて、自分の事務所を設立しました。
税務調査で見た「社長の無関心」という構造的な問題
—— 国税の職場で数多くの企業を見られてきた中で、どのような課題がありましたか?
児玉: 国税時代には、1000件以上の倒産処理に向き合ってきました。その中で特に強く感じたのが、“社長の無関心”が組織を弱らせるという構造的な問題です。
そこから具体的に見えてきたのは、どの会社にも“同じ落とし穴”があるということです。端的に言えば、数字の見方を誤ったまま経営判断してしまうこと。これが倒産につながる大きな原因のひとつです。
さらに、社長が忙しく気づけないうちに従業員が不正に走ってしまうケースや、社長の小さなクセが組織全体に広がってしまうケースもありました。
まさに“社長の無関心”が組織を弱らせる構造なんです。
—— 税理士として独立した後も、その構造的な問題を感じますか?
児玉: はい。経営者と直接関わるようになってからも、理想を語れても行動に移せない方が多いと感じています。原因の一つは、会計資料のわかりづらさです。月次試算表や資金繰り表を見て、説明を聞いても「早く終わらないかな」と思ってしまう。数字が多くて流れが見えず、税理士は“教えているつもり”でも、経営者の心には届いていないんです。
税理士・会計士のためのコミュニティ「ふらっと」
互いの得意分野を活かした協業のきっかけや、業界の最新トレンドが集まるコミュニティです。
ぜひお気軽にご参加ください。
「お金を守り、育てる」を最優先に。行動に直結する未来志向のツール
—— その課題に対し、どのように対処していますか?
児玉: 「TB思考」というツールを作り、判断指標として活用しています。「TB思考」では、過去の会計を見るのではなく、これからの取引で資金がどう動くかまでイメージできます。これを活用すれば、「やる・やらない」の判断がしやすくなります。つまり、数字を「読む」だけでなく、数字を「使える」状態になるのがTB思考®の目的なんです。
—— 未来志向のツールですね。一般的なBSやPL重視の思考とは違うのでしょうか?
児玉: はい。TBは「トライアルバランス(試算表)」の略で、BSとPLを一括りにして考える方が分かりやすい。お金の流れや動き方を、仕訳の感覚でイメージできます。

さらにTB思考®では、「お金」を主人公として資産から独立させ、資産・負債・純資産・収益・費用に「お金」を加えた“5+1”の6ブロックで整理しています。
こうすることで、“お金を増やすにはどうすればいいか”──つまり、右側の「お金の集め方」を増やすのか、左側の「お金の使い方」を減らすのかが、直感的に理解できるようになります。中小企業にとって最も大切なのは、「お金を守り、育てること」です。経営者自身が数字を理解し、行動できるようになる。そこにこの思考の価値があります。
「TB思考」を広め、業界全体の底上げを目指す
—— 現在は「TB思考」を広める活動にも力を入れられているとか。
児玉: はい。経営者向けだけでなく、税理士向けセミナーも本格化させています。私が顧問先を1社ずつ増やすよりも、税理士を支援することでより多くの中小企業を救えると考えたからです。いわば“レバレッジ効果”を狙っています。
—— 税理士業界全体の底上げを目指しているんですね。
児玉: そうです。今は国税OBの数も減り、調査の選定や現場の感覚を知らないまま独立する方が増えています。私は長年、現場の責任者として「会社を潰すような調査はおかしい」という信念でやってきました。
全国に「TB思考」を実践するコアメンバーをつくり、顧問業務の日常的な相談は各税理士が行い、難しい案件やトラブル対応は私や国税OBが後方支援する。そうした“連携の仕組み”を整えたいと考えています。
税理士は単なる「記帳代行屋」ではなく「行動を促すナビゲーター」
—— 最後に、読者である士業の皆さんへメッセージをお願いします。
児玉: 私たちは単なる「記帳代行屋」ではないはずです。中小企業の経営者は、分かっていても動けないことが多い。だからこそ、私たちが「行動を促すナビゲーター」であるべきです。
「TB思考」のように、数字の裏づけをもとに未来を描けるよう導くこと。それが真の専門家の役割です。税理士は“守る側”として、経営者と共に動く存在であってほしい。
ぜひ一緒に、中小企業の未来をナビゲートしていきましょう。お会いできる日を楽しみにしています。
(※TB思考®は児玉光史の登録商標です)
先生のご紹介
児玉 光史 [KODAMA KOUJI]
略歴:税理士。大学時代に公認会計士を目指すも、中小企業を“広く深く”知るため、卒業後は国税専門官として東京国税局で採用。約30年間にわたり、法人・個人・資産・徴収などの税務調査を経験し、現場で活躍。現場調査に加え、税務行政の改善にも携わり、現場と制度をつなぐ立場で多くの経験を積んできた。その後独立し、税理士として活動。長年の経験から、経営者が数字を理解し将来の資金繰りまで見通せる思考法「TB思考」を普及させている。税理士向けセミナーや税務調査対策のアドバイスも行い、より多くの中小企業支援を目指す。
所在地:埼玉県さいたま市桜区山久保2-16-1-412 パークスクエア浦和埼大通り