青木 幹雄

税理士法人ナナイロ【税理士/公認会計士】青木 幹雄

「生きた会社」を支える喜び──公認会計士が語る、10億円の壁を超える組織づくり

「潰れていく会社」の清算から「生きた会社」の伴走へ

—— まずはご経歴と現在の活動をお聞かせください。

青木私は現在47歳で、公認会計士として監査法人でキャリアをスタートしました。約5年半勤めた後、2008年4月に独立し、当初は監査のアルバイト、システムコンサル、税務業務を1/3ずつという形で「1人親方」として活動していました。税理士登録は同年6月でしたが、税務は全体の一割程度でした。

現在は税理士法人ナナイロを相方と約10名のチームで運営し、「変わる覚悟のある中小企業の経営者」の伴走者として、税務顧問を軸に価値提供を行っています。記帳代行は一部に留め、自計化を促しつつ、必要に応じて他士業・専門家へつなぐコネクティングまで含めたサービスを展開しています。

—— 監査業務から税理士業務にシフトされた転機は何だったのでしょう?

青木2008年9月のリーマンショックが大きな転機でした。日本のリーマン・ブラザーズ証券の民事再生・清算業務に約11年間関わり、刺激的で面白い仕事をさせてもらえました。しかし、対象は「潰れていく会社」で、業務は次第にシュリンクしていく。前向きに事業を伸ばすような活動はなく、次第に寂しさを感じるようになりました。

その一方で、夜は大学の後輩の事務所を手伝っていました。そこで、中小企業の経営者と一緒に前を向き、売上や組織をつくって「やっぱり生きている会社っていいな」と強く実感したんです。清算業務は「守りの仕事」で未来を創れませんが、中小企業支援は「攻めの仕事」で、経営者と共に未来を描くことができます。その「攻めの仕事」に心が動き、税務顧問として中小企業の成長支援に軸足を移していきました。

分裂を乗り越え「チームで届ける価値」への転換

—— 現在の事務所設立に至る背景をお聞かせください。

青木:うちの事務所は2021年1月からスタートしています。前の事務所が、あるあるなんですけど、分裂・分解したことがきっかけです。前の事務所自体も個人共同事務所にシュリンクしてしまって、中にいた人も全部バラバラになってしまいました。私はその時一緒にいた3人と、今の相方と一緒に5人でスタートしました。

「1人でやろうかな」とも考えたんですが、組織でやることの意義を改めて考えた時に、やはり自分1人で提供できるサービスの範囲には限りがある。チームとして、私や相方が満足できるレベルの業務サービスを提供したいと強く思ったんです。それが組織でやると決めた理由で、5年経った今でもその考えは変わっていません。『早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け』という諺を体現したいと考えています。

—— 事務所の特徴や方針はありますか?

青木:成長の壁に直面して変化を模索している経営者を支援したいという方針があります。例えば売上10億円の壁を突破しようとする企業には「社長一人の限界」があると考えており、そこを超えるには、幹部や人事を中心とした「チーム経営」への転換が必要です。

税務だけでは越えられない壁なので、法務、労務、人事、資金調達など、他分野の専門家とつながり、経営を総合的に支える「コネクティング・サービス」を提供する。これが私の理想です。

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人を生かす組織づくりへの挑戦

—— 事務所の組織づくりにおいて、注力していることはありますか?

青木:この1年で最も力を入れているのは「人事」です。税務でもコンサルでもなく、事業を成し遂げるために人を生かす仕組みづくりですね。お客様が変化するから、私たちも変わらないといけない。そのためには「人を生かして事を成す」考え方が不可欠です。

この業界では、職員の定着や成長に課題を抱える事務所も多い。だからこそ、「成長したい」「変化したい」という意欲を持つ人たちとチームを組む。負荷もかかりますが、そこに価値を見出す文化をつくりたいんです。

事務所の目標である自分たちを変えていきたいと思って事業を進める中小企業経営者の支援と、個人の成長を人事制度で連動させたいと思っています。「ナナイロレンジャー」のコンセプトも、弊社のクライアントである中小企業経営者に生み出してもらったキャラクターで、これが「七色」の挑戦の出発点でもあります。

—— 具体的な取り組みがあればお聞かせください。

青木:ハイブリッド環境でも質を落とさないよう、顧客とのやり取りは全員がアクセス可能にし、面談は録音・文字起こししてナレッジ化しています。社内SNSでは私が業界ニュースをキュレーションし、代理体験を通じて知識を共有しています。

知識だけならAIに負けますが、哲学や思いと掛け合わせた伴走は簡単に代替されません。最近入ったメンバーからは「先輩方の対応を見ることで非常に勉強になる」と言ってもらえています。

実践で得た学びをメンバーに還元し、中小企業経営者を支援

—— 今後の目標や取り組みについてもお聞かせください。

青木:「変化したい」「変わりたい」「変えたい」という欲求を持つ経営者を支援したいですね。事業承継を通じて自分らしい経営をしたい人、ゼロからチームを作って社会に挑みたい人。そうした前向きな変化に伴走したい。

今後は、税務と連動した保険契約の見直しなど、事業承継を見据えた戦略的サポートも強化します。また、組織としては、営業戦略と人事制度の両輪を進化させ、まずは自分たちが「変化の実験台」になるつもりです。

私たちが実践で得た学びをお客様に還元し、「中小企業経営者にとっての“かかりつけ医”」のような存在を目指していく。その喜びを共有できる存在でありたいですね。

成長の負荷を恐れず、変化し続けよう

—— 最後に、この記事を読む税理士・会計士の方へメッセージをお願いします。

青木:AIが進化する時代、私たちが提供すべき価値は「記帳や申告」ではなく、「経営者と共に未来を創る力」だと思っています。頼られる専門家とは、数字の先にあるビジョンを共有できる人です。

そのためには、私たち自身が成長の負荷を恐れず、変化を続けなければなりません。ナナイロは楽な職場ではありません。でも、その負荷の先に、確かな成長と価値の高まりがあると信じています。

もし、「今の自分を変えたい」「事務所を進化させたい」と思う方がいれば、ぜひ一度お話ししましょう。生きた会社を支える喜びを、共に追求していきたいです。

先生のご紹介

青木 幹雄 [AOKI MIKIO]

略歴:税理士・公認会計士。大学卒業後、監査法人で会計監査に従事し、約5年半経験を積み独立。独立当初は会計士業務がメインで、リーマン・ブラザーズ証券の民事再生手続きなどの清算業務を10年以上にわたり経験。
2015年頃より「生きた会社」を支援する税理士業務に注力し始め、2021年1月、税理士法人ナナイロをスタート。「変革」を望む中小企業経営者を支援。税務会計に加え、人事・組織開発を重視したコンサルティングに注力している。

所在地:東京都千代田区麹町4-8-1

HP:https://nanairo-group.co.jp/