角野 真悟

角野真悟税理士事務所【税理士】角野 真悟

「ローカルの満足度を高めたい」地域に根ざし、「二歩先」を見る税理士の軌跡

「営業はやりたくない」から始まった税理士のキャリア

—— まずは先生の現在の活動について教えてください。

角野: 現在は大阪府豊中市を拠点に、地域に根ざした税理士事務所を運営しています。当初は「一人でスリムにやっていこう」と考えていましたが、お客様の増加に伴い、スタッフを採用し、事務所を借りて運営しています。今は「地域により深く貢献できる事務所」へと形を変えている最中です。

—— 税理士を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?

大学で会計を学んだものの、一般企業を志望して就活しまして。でも「営業はやりたくない」というこだわりが弱点となり、思うように進まず。次第に知識や専門性で評価される仕事に惹かれていき、大学4回生の時に「それなら税理士を目指そう」と進路を切り替えました。

 資格取得まで約8〜9年かかりましたが「いつかは必ず取れる」と信じていたので「とにかく実務を早く経験しよう」と会計事務所に片っ端から電話をかけ、簿記2級だけを頼りに個人事務所でのアルバイトからスタートしました。

—— 実務と勉強の両立にはご苦労も多かったのでは?

角野:そうですね。最初の個人事務所ではワンマン体制で勉強が続けにくく、次に移った40人規模の法人では福利厚生が良く、逆に危機感を失いかけました。

そこで29歳でEY税理士法人に転職しました。所属者の9割が税理士という環境に飛び込んだことで、強烈な刺激を受け、転職後わずか1年で最後の科目に合格できました。停滞していた自分を動かしたのは、やはり環境でしたね。

EYには最初から「3年で辞める」と決めて入り、子どもが2歳になって生活を見直す意味でも、計画通りに独立を選びました。

顧客満足度向上のため「ローカル」の満足度を重視

—— 独立後、事務所の運営方針についてお聞かせください。

事務所運営で大切にしているのは、規模を追うのではなく「ローカルの満足度を高める」ことです。豊中市と北摂地域に特化し、小規模でも質の高いサービスを提供したいと考えています。

今後は顧問業務に加え、相続や資金調達支援など付加価値の高い業務を強化していきます。創業支援ではクラウド会計導入から借入支援、バックオフィス整備まで一気通貫で対応できる体制をつくっていまして。

さらに中小企業診断士の学びを活かし、経営計画の策定などにも力を入れていきたいですね。

—— 「ローカルの満足度を高める」とは、具体的にはどのような施策でしょうか?

角野:まずはアクセスのしやすさやレスポンスの速さなど「お客様の動きやすさ」を意識しています。

そして、SEOやMEOを活用し、地域での検索上位を狙っていますね。都心と比べて競争が緩やかな分、費用を抑えて効果を出せるのも地方ならではの強みです。

さらに、最も大事にしているのは「ホスピタリティ」です。専門知識は当然ですが、それをどう伝えるかで信頼度は変わります。専門用語を噛み砕き、次に何をすべきかを明確にする。お客様に安心感を持っていただくことで、「この人なら任せられる」と思っていただけるんです。その瞬間が、一番やりがいを感じる場面ですね。

地域特性を見極めて案件を選び、業務の平準化で負荷分散

—— 今後の事務所の方向性について教えてください。

角野:地域特性を踏まえると、これからは相続案件が増えるとみています。

豊中周辺には地主や資産家の方が多く、インフレや基礎控除の引き下げも重なり、税務相談はさらに増えるでしょう。顧問業務で安定基盤を固めつつ、単価の高いスポット業務を積極的に強化していきたいです。

—— 事務所の組織づくりについてはどうでしょうか?

角野:短時間勤務でも力を発揮できるよう、クラウド会計を活用し、マニュアルを整備していまして。今は子育て世代の主婦の方にパートで入っていただいています。

ノウハウを属人的にせず、誰でも対応できる体制にすることが、今後の成長に欠かせないと考えています。スタッフが自分のキャリアを描けるような「働きやすい事務所」にするのが目標ですね。

地方だからこそ、最新の知見で「二歩先のサービス」を

—— 最後に、これから独立を考えている方や同業者へメッセージをお願いします。

角野:独立直後は売上に不安を抱きがちですが、焦る必要はありません。まずは複数年分の事業計画を立て、売上目標を立てる時間と自己投資の時間のバランスをとってください。私は「最初の数年は猶予期間」と捉えて、知識や資格の習得に力を注ぐことを勧めます。その期間が、数年後の事務所の質を決めます。

また、東京の先生方がSNSでAIや最新ツールの情報を発信してくれていることにも感謝しています。私のようなローカルの税理士にとって、その情報は非常に有用です。地方だからこそ、最新の知見を取り入れて「二歩先のサービス」を提供できる。業界全体で情報を共有し合いながら、もっと魅力的な職業にしていきたいですね。

先生のご紹介

角野 真悟 [KADONO SHINGO]
略歴:税理士。関西大学商学部で会計を専攻し、大学4回生から税理士を志す。在学中に会計事務所でアルバイトとして実務を学び、卒業後に正社員として勤務。その後、EY税理士法人で経験を積み独立。豊中市を拠点に地域密着型の事務所を運営し、創業支援やクラウド会計導入、借入支援、バックオフィス整備を得意とする。顧客満足の向上と子育て世代が働きやすい職場づくりを目指している。
所在地:大阪府豊中市岡上の町4丁目2-12
HP:https://kadono-zeirishi.com/