
PROS税務会計事務所 【税理士】笠井恭平
「頂を目指して歩む道」──元国税職員が辿った、独立税理士のリアルな軌跡
国税から自分の専門性を活かすために税理士の道へ
──まずは、これまでのご経歴について教えていただけますか?
笠井:新卒で国税局に入局し、10年間ほど勤務した後、都内の大手税理士法人に転職し、2023年に「PROS税務会計事務所」を立ち上げました。今は全国対応しつつ、地元のお客様にも丁寧に向き合っています。
──そもそも、なぜ国税職員を目指されたのでしょう?
笠井:やりがいのある仕事や非日常的な緊張感を求めて、漠然と「刑事っぽい仕事がしたいな」と思っていました。体力にあまり自信がなかったため、実際の警察官ではなく、知的に事件に向き合う仕事に関心を持つようになりました。当時は、公務員に絞って就職活動をし、いくつかの官公庁から内定を頂きましたが、最終的には、その時に見ていた国税調査官のドラマをきっかけに、「国税ってかっこいいな」と感じたことが最大の理由です(笑)。
ー国税から税理士法人に転職されたきっかけはあったのでしょうか?
国税にいた頃は、資料調査課や国税不服審判所など、様々な部署を経験し、税務の奥深さや社会的意義を実感しましたが、一方で「自分の専門性をもっと高め、もっと広く活かしたい」という思いが芽生え、税理士を志すようになりました。とはいえ、国税以外の民間での実務経験がなかったため、税理士法人への転職活動は決して簡単なものではありませんでした。
ー税理士法人時代はどのくらい勉強されていましたでしょうか?
税理士法人に転職して、働きながら試験勉強を始め、平日は3〜5時間、休日は5〜7時間、直前期には7時間以上、「継続は力なり」という言葉があるように、毎日欠かさずコツコツと勉強しました。私は登山が趣味ですが、休日にテントを背負って登山に出掛けたとしても、夜寝静まったテントの中でブツブツと音読していました(笑)。周りの登山者に迷惑をかけてしまっていたかもしれません(すみません・・・)し、妻から「うるさい」と怒られることもありましたが、それも今となっては良い思い出です。
「幅広い業種・規模の顧客に関わりたい」と独立を決意
──独立を考えたのは、どんなきっかけがあったのでしょう?
笠井:税理士法人では国際税務に特化していましたが、気付けば関わるクライアントの領域が限られてしまっていました。「もっと幅広い業種や規模のクライアントと関わり、それぞれに合った解決策を提案したい」という想いが日に日に強くなっていったんです。「自分の力を試したい」という挑戦心も後押しとなり、2023年に独立を決意しました。
──事務所名の「PROS」にはどんなコンセプトがあるのでしょうか?
笠井:「PROS」は、Professionalism(専門性)、Reliability(信頼性)、Openness(透明性)、Sustainability(成長性)の頭文字を取っています。単なる会計・税務サービスにとどまらず、お客様と“共に成長し、共に幸せになる”ことを最大のミッションに掲げています。お客様から「信頼される存在」であり続けるための指針を、この名前に込めました。
──「元国税」という経歴は、税理士業を行う上でやはり強みになりますか?
笠井:そうですね、国税にいた頃は、鳥の目・虫の目・魚の目の3つの目を持って税務調査に挑むように、とよく言われていました。税務調査では「調査官はどう動くか」「調査官はどこに着目するか」をある程度予測できるので、この3つの目をもって、クライアントが抱える税務上のリスクを事前に洗い出し、安心できる対策を講じられるのは大きな強みだと思います。
──クライアントとの関わりで、意識していることはありますか?
笠井:僕自身の役割は、経営者が本業に専念できるようにしっかり支えることです。ただの「外注先」ではなく、同じ景色を見て進む「パートナー」でありたい。イメージとしては「一緒に山を登る伴走者」ですね。
税理士って堅苦しくて相談しづらいと思われがちですが、だからこそ“話しやすさ”や“安心感”を意識しています。税金の専門的な話もできる限り平易に伝え、「相談してよかった」と思っていただける関わり方を大切にしています。
地道に向き合って、信頼を確実に積み上げる
──これから独立を考える士業の方に、伝えたいことはありますか?
笠井:私自身もゼロからのスタートでしたので、不安はたくさんありました。ですが、紹介会社を活用したり、自分から積極的に動いてご縁を作ったりしながら、少しずつクライアントを増やしていきました。振り返れば、あのとき思い切って踏み出して本当によかったと思っています。
大切なのは、自分の専門性や誠実さを丁寧に伝えていくことです。それはすぐに結果には結びつかないかもしれませんが、時間をかけて必ず「信頼」へと変わっていくと思います。独立は必ずしも一発逆転のような華やかなものではありませんが、毎日の地道な積み重ねが、「信頼」という目に見えない資産を築いていくと私は信じています。
自分のペースで一歩ずつ、確実に前へ
──最後に、freee Advisor Dayに参加される方にメッセージをお願いします。
笠井:イベントは、士業同士がフラットに学び合える、とても貴重な場です。普段は一人で抱え込みがちな仕事だからこそ、仲間と経験を共有する時間が、大きな刺激と学びになります。僕自身、まだまだ「探索の途中」にいる存在なので、同じ立場の仲間と悩みや工夫を共有しながら学び合い、刺激を受けて前に進んでいければと思います。
士業のキャリアは、山登りによく似ていると思います。急いで頂上を目指す必要はありません。大切なのは、自分のペースで一歩ずつ確実に前に進むこと。そして、ときには隣を歩く仲間と声を掛け合い、助け合いながら登っていくことです。
この記事が、皆さんにとって「次の一歩」を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。
先生のご紹介
笠井恭平 [KASAI KYOHEI]
略歴:税理士。新卒で国税局に入局後、税理士法人に転職し国際税務を経験。在職中に税理士試験に2年半で官報合格。「幅広い顧客に関わりたい」との思いから2023年に独立し、PROS税務会計事務所を立ち上げる。
「共に成長し、共に幸せになる」ことをミッションに掲げ、経営者が本業に専念できるよう、専門性・信頼性・透明性・成長性を大切にしたサポート。「元国税」という経歴を活かし、クライアントにとって「一緒に山を登る」ようなパートナーを目指して活動する。
所在地:神奈川県川崎市宮前区菅生