米世 毅

税理士米世毅事務所【税理士】米世 毅

会計事務所は未経験、52歳で独立した税理士の挑戦

お金に関わる仕事がしたい公認会計士に憧れた小学生時代

—— まず、現在の活動についてお聞かせください。

米世: 昨年10月に独立開業し、事務所は一人で運営しています。主にIT関連企業やコンサルティング業のお客様に税務サービスを提供しており、完全ペーパーレス・オンライン完結で業務を行っています。ミーティングなどのやり取りもすべてデジタル。効率よく仕事を進められるお客様に特化しているのが特徴です。

—— いつ頃から税理士を目指されたのですか?

米世: 小学生のころから「税理士になりたい」と思っていました。身内に公認会計士のおじさんがいて、自宅で仕事をしているのを見て「通勤電車に乗らなくていい仕事があるんだ」と驚いたのがきっかけです。

その頃から税金関係にとても興味があったので、自分もお金に関わる仕事がしたいと思いました。

グローバルな現場と被災地で鍛えられた「経営全体を見渡す力」

—— その後、USCPAを取得され、新卒で資生堂へ入られたのですね。

米世: 海外で働きたいという思いがあったんです。資生堂では入社直後にバリ島の新規事業開発に携わり、ジャングルにスパ施設を造るという壮大な計画を任されました。当時は「こんなところに本当にスパができるのか?」と思いましたが、完成したときは大きな達成感がありました。

その後も国際事業部や経営企画部、ベトナム工場勤務などで様々な仕事を経験しました。その中でも特に忘れられないのは、東日本大震災の時です。津波で流された商品の会計処理をどう整理するか、被災地の決算対応に奔走しました。その経験から、イレギュラーへの対応力や数字を超えた「経営全体を見渡す力」が鍛えられたと思います。

—— 52歳で独立されたわけですが、きっかけは何だったのでしょうか?

米世: このまま会社にいても定年の65歳までしかいられないなと思ったんです。70歳になっても働き続けるには「何か手に職があった方がいい」と考えました。もともと財務大学の大学院を出ていたので税理士資格の要件は満たしていましたし、会社の退職制度を活用できたことも独立の後押しになりました。

また、その頃「freee」のプロダクトがちょうど進化している途上で、これならいけるだろうという確信もありました。なので、会計事務所を経験せずに独立したかなり珍しい例になります。

独立後の課題、AI活用で手に入れた強みは「レスポンスの速さ」

—— 開業して最初に直面した課題は?

米世: 会計事務所での勤務経験がなかったので、e-Taxの使い方すら分からず(笑)。最初の頃は色々と奮闘しました。ヘルプデスクに電話したり、税理士会の先輩に相談したり、横の繋がりや縦の繋がりをどうにか駆使して一つひとつクリアしていきました。大事なのは「まずやってみること」。動きながら覚えるしかないと実感しましたね。

ただ、ありがたいことに顧問先は増えていますが、キャパシティが限界に近づいています。この問題を解消し、売上をさらに伸ばすためにはサービス単価を上げるという手段もありますが、自分のポリシーとして「一度ご契約いただいたお客様に対しては、決まった料金表通りで進めたい」とも思っていて、値上げに踏み切れないのが現状です。

今はAIを積極的に取り入れて業務を効率化し、単純作業を減らすなどして試行錯誤を続けています。

—— AI活用にはとても前向きだと伺いました。

米世: ChatGPTをはじめ、Google MeetやLINEを組み合わせています。お客様とのやり取りはLINEでスピーディーに。質問があればすぐに返信し、必要ならその場でGoogle Meetを立ち上げて画面を共有する。レスポンスの早さは「他の事務所にはない強み」と評価いただいています。

AIを活用することで、一人でも複数人分の仕事をこなせる。だからこそ、記帳代行に時間を取られることなく、融資やIPO支援といった高付加価値業務に注力できているんです。

中小企業のCFOをめざして

—— 今後の展望についてお聞かせください。

米世: 英語での税務サービスを提供し、海外進出を考える日本企業や日本に進出する外国企業をサポートしたいと考えています。また、経営企画や財務戦略を担ってきた経験を活かし、中小企業にとっての「CFO」のような役割を果たしていきたいです。

実際に、地域貢献への取り組みとして、神奈川税理士会の情報システム部の副部長を務め、地域のIT化・DX化を支援しています。「専門家として社会に役立ち続けたい」という思いが活動の根底にあります。税務の知識だけでなくITの力も活用し、より多くの企業や地域社会に貢献していきたいです。

「動いたもん勝ち」で独立のチャンスをつかもう!

—— 最後に、読者へメッセージをお願いします。

米世: 独立したい気持ちがあるなら、一日でも早く開業すべきだと伝えたいです。結局は「動いたもん勝ち」。失敗してもまた会計事務所勤務に戻ればいいという気持ちで、まず一歩を踏み出すことを大事にしてください。そこからが「本当の学び」なんですから。

先生のご紹介

米世 毅 [YONESE TAKESHI]
略歴:税理士。資生堂でファイナンス領域のキャリアを積み、ベトナム工場の管理部長や本社経営企画部を歴任。上場企業のIR部門にも所属し、IPO後の支援も得意とする。52歳で独立し、会計事務所未経験ながら「ITとコンサル」専門の事務所を立ち上げる。オンラインとペーパーレスに特化し、スピード感のある対応とfreeeを活用したDX支援を強みとしている。
所在地:神奈川県横浜市港北区大豆戸町803番地2 大倉山ハイム7-207
HP:https://tax-yonese.jp/