飯野惠一税理士事務所【税理士】飯野 惠一

36年の国税キャリアを武器に、顧客ゼロから挑む独立——企業の「守護神」として歩み続ける税理士の軌跡

2026-09-24

飯野 惠一

映画への憧れから始まった国税の道。簿記未経験で飛び込んだ挑戦

——まずは、この業界を目指したきっかけをお聞かせください。

飯野:実は、最初から税務の仕事に強い思い入れがあったわけではありません。大学は法学部で、周囲は司法試験を目指す人ばかりでした。当時は現役合格が非常に難しく、浪人するか、金融機関へ進むか、公務員になるかという選択肢が一般的だったんです。

そんな頃、税務署を舞台にした映画が流行していて、「面白そうだな」と興味を持ちました。さらにゼミの友人から国税専門官という仕事を教えてもらい、実務経験を積めば税理士資格にもつながると知って受験を決意しました。結果的に合格し、「就職先が決まってよかった」というのが当時の率直な気持ちでした。

——学生時代から会計を学ばれていたのでしょうか?

飯野:いいえ。本格的に簿記を勉強し始めたのは大学卒業後の22歳からで、専門学校に通って基礎から必死に学びました。父からも「挑戦してみなさい」と背中を押してもらったのを覚えています。実家が水道業を営んでおり、体力勝負の仕事の大変さを身近で感じていた父は、公務員という道に安心感を抱いていたのかもしれません。

姉二人も公務員だったので、気がつけば家族全員が公務員になっていました。法律を学ぶこと自体は好きだったので、その知識を社会で生かせる環境に魅力を感じ、少しずつこの仕事に引き込まれていきました。

「できません」とは言えない環境で学んだ、基礎の大切さ

——国税局時代で、特に印象に残っている経験はありますか?

飯野:入局した当時は、今よりずっと厳しい時代でした。夜9時、10時まで働くのも珍しくなく、「任された仕事は必ずやり切る」という空気が当たり前でした。大きな転機になったのは、課税部から調査部へ異動したことです。約10年間、日経新聞に載るような上場企業の税務調査を担当し、町の商店から数千億円規模の企業まで、実に幅広い事業者を見てきました。その経験を通じて、多様な経営者や財務担当者と接することができたのは大きな財産です。

——特に苦労された案件もあったそうですね。

飯野:一番印象に残っているのは、大規模な連結納税調査です。当初はチームで担当していましたが、途中でメンバーが抜け、最終的には実質一人で進めることになりました。当時は「できません」という言葉は許されませんから、「もちろんやります」と引き受けるしかありませんでした。

現地調査自体は経験があったので対応できましたが、本当に苦労したのは、その後の内部処理です。企業側の協力や局内のスペシャリストの助けを得て何とか乗り越えることができましたが、この経験で痛感したのは、基礎を愚直に積み重ねることの大切さです。「もっと若いうちから、一つひとつ丁寧に会計・税務の基礎を勉強しておけばよかった」と今でも思いますね。

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顧客ゼロからの独立。それでも前を向けば道は開ける

——定年後、独立を選ばれた理由をお聞かせください。

飯野:大手会計事務所への転職も考えましたが、「また組織の中で働くより、自分の裁量で仕事をしたい」という気持ちが強くなりました。それなら顧客ゼロでも自分で始めようと決めたんです。

不安は意外とありませんでした。36年間いろいろな部で困難を経験し、そのたびに乗り越えてきたので、「前へ進めば何とかなる」という感覚が自然と身についていたんですね。

——先生が理想とする税理士像はどのようなものですか。

飯野:私は企業の「守護神」でありたいと思っています。単に記帳や申告をするだけでなく、数字の背景を読み取り、「これからどう成長していくか」を経営者と一緒に考える存在です。

財務体質を強くし、黒字経営を続けられれば、金融機関や税務当局からの信頼も高まります。経営者の本当の悩みは信頼関係がなければ聞き出せないものなので、できる限り直接お会いし、表情や声色から不安や迷いを感じ取りたいと思っています。

国税で培った経験を力に、企業支援の新たなステージへ

——現在はどのようなお仕事が中心ですか?

飯野:独立してまだ日が浅いですが、税理士仲間や知人から紹介いただき、創業支援や相続、個人事業主のサポートなど幅広い仕事に携わっています。国税時代は完成した申告書を確認して問題点を見つける立場でしたが、今は会社設立や制度づくりなど、ゼロから積み上げる仕事が中心です。この違いが非常に新鮮で、学ぶことも多いですね。

知識が足りない部分は、本を買い、専門誌を読み、研修に参加し、AIも参考にしながら徹底的に調べます。以前は「試験や調査のための知識」だったものが、今は経営者を支える実務として生きている。その実感が大きなやりがいになっています。

——今後、特に力を入れていきたい分野はありますか?

飯野:外国法人調査や移転価格税制など、国際税務に長年携わってきた知識や経験を生かし、海外展開する企業を支援していきたいと考えています。海外子会社や国外関連会社を持つ製造業は、複雑な税務リスクを抱えていますが、この分野を専門に扱える税理士は決して多くありません。

国税OBには一定期間、過去に関与した企業へ接触できないルールがありますが、その期間も終わり、これから本格的に活動していくつもりです。

AI時代でも変わらない、人と向き合う価値

——近年はAIの進化が著しいですが、税理士業界への影響をどのように見ていますか。

飯野:仕訳やデータ分析などの定型業務は、AIが非常に得意な分野です。効率や正確性を考えれば、積極的に活用すべきでしょう。私自身も情報収集や調べものにAIを活用しており、とても便利なツールだと感じています。

ただ、その力を十分に引き出すには、使う側にも知識や経験が必要です。質問の仕方によっては偏った答えになることもあるので、最終的に内容の妥当性を判断するのは人間の役割です。

——AIがあっても、人にしかできない仕事は残るということですね。

飯野:まさにそうです。数字を分析した先にある経営判断や、経営者の思いに寄り添いながら次の一手を考える仕事は、AIには代替できません。だから私は、できるだけ月に一度は直接お会いし、表情や声のトーンも含めてコミュニケーションを取ることを大切にしています。AIが進化する時代だからこそ、人と向き合い、信頼関係を築きながら伴走する税理士の価値は、これまで以上に高まっていくと考えています。

「知識」は使ってこそ価値になる

——最後に、ご自身のキャリアや将来について悩む税理士・会計士の方へメッセージをお願いします。

飯野:後ろを振り返って悩んでいる時間があるなら、泥臭くても一歩前へ進んでみてください。行動していれば、新しい出会いやチャンスは必ず生まれます。資格や知識を持っているだけでは、それは単なる「コレクション」に過ぎません。現場でアウトプットし、経営者と向き合い、社会や経済のダイナミズムを肌で感じてこそ、本当の価値になります。

私自身も独立したばかりで、今なお勉強の日々です。それでも、目の届く範囲のお客様と誠実に向き合い、企業の「守護神」として力を尽くしていきたいと思っています。お互いに前を向いて、一歩ずつ挑戦を続けていきましょう。

先生のご紹介

飯野 惠一 [IINO KEIICHI]
略歴:税理士。
大学の法学部を卒業後に東京国税局に入局し、約36年間勤務。在職中は調査部に10年間在籍し、上場企業の連結決算の調査や、外国法人調査・国際税務などを専門的に担当。退職後、顧客ゼロの状態で独立開業を果たす。
経営者に寄り添う「企業の守護神」のような存在となることを目指し、顧問先の財務力を強化して黒字化をサポートすることに注力。前職で培った豊富な経験をもとに、海外進出を行う企業の国際税務支援や創業支援、相続、個人事業主のサポートまで幅広く手がける。

所在地:神奈川県逗子市逗子 1-10-11 2F
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