Vmaster税理士事務所【税理士】松田 光弘

数字の奥にある「経営者の本音」と向き合う ——AIとコミュニティを武器に経営者と伴走する、元営業マン税理士

2026-09-15

松田 光弘

自分だけの「手に職」を求めて進んだ税理士への第一歩

——まずは、先生のこれまでの歩みをお聞かせいただけますか?

松田:私は石川県で生まれ、10歳の時に東京へ移り中高時代を過ごしました。その後、大学進学で京都へ移り住み、就職を機に再び東京へ戻ってきたため、「ここが地元」という特定の場所があまりないんです。ちなみに、学生時代は一貫して柔道に打ち込んでいましたが、いわゆる強豪校ではありませんでした(笑)。

大学は法学部で学び、卒業後は東京のケーブルテレビ会社に就職しました。このように、いろんな環境で多様な人と関わってきた経験が、今の自分のベースになっていると感じています。

——初めから税理士を目指されていたわけではなかったのですね。

松田:そうなんです。就職して最初の2年間は現場で営業を経験し、3年目からは本社の企画部署で事業計画や業務化、数値管理などを担当していました。そこで5、6年ほど数値に触れる仕事をする中で、「社内だけでしか通用しないスキルではなく、しっかり手に職をつけたい」という思いが強くなり、税理士という資格を意識し始めました。

「熱意ある経営者」に寄り添いたい。現場の熱量に直接触れられる伴走者を目指して

——公認会計士ではなく、税理士を選ばれたのには何か理由があったのでしょうか?

松田:大きな会社に勤めていたので、業務が縦割りだったんですよね。そんな折、会社の新規事業開発プロジェクトで、新しい技術を持つ中小企業の見学に行く機会があったんです。

そこで訪ねた企業の事務所が、ビルの最上階にある天井が斜めになった屋根裏部屋みたいな場所で(笑)。そこで50歳くらいの社長さんが、当時最新だった全方位カメラの技術を、目を輝かせながら一生懸命説明してくれたんですよ。

——屋根裏部屋で情熱を注ぐ社長さんとの出会い、とても印象的なエピソードですね。

松田:本当に強く心に残っています。会計士が主に向き合うのは大企業ですが、税理士なら、まさにあの社長さんのように情熱を持って事業に挑む中小企業の経営者と深く関われる。「この人たちの力になりたい」と直感しました。

また、働きながら科目ごとに挑戦できる税理士試験の仕組みも、社会人だった自分には合っていたんです。そこから転職し、税理士法人で働きながら資格取得を目指す過酷な日々が始まりました。

勉強と仕事の両立。試験の壁を越える中で気づいた「学びの最適解」

——社会人として税理士法人で働きながらの受験勉強は、かなりの試行錯誤があったのではないでしょうか。

松田:本当につらかったですね(笑)。仕事もハードで連日夜遅くに帰宅してから、毎日2〜3時間は机に向かう生活でした。最初は意気込んで一気に複数科目を同時に受けようとしたんですが、エネルギーが分散して共倒れしそうになって。自分の限界を知り、「エネルギーの使い方を最適化する」という方針に切り替えました。

「1年で3科目一気に合格してやる!」と焦る気持ちもありましたが、限界を超えて無理をすると結局どれも中途半端な点数になって、1科目も受からないということにもなりかねませんからね。

——実体験に基づくお話だからこそ、非常に説得力があります。具体的には、どのようにしてその壁を乗り越えられたのですか?

松田:まずは確実に1科目に絞って集中し、税法科目を取った後は無理に試験だけで走り切ろうとせず、大学院へ進学して修士論文を作成する道を選びました。

大学院では単なる丸暗記ではなく、条文の本質を深く読み解く力や、多角的な視野を学ぶことができました。暗記力や計算速度を競う試験問題の攻略に悪戦苦闘するより、教授や仲間と議論を重ねて論文を書く経験の方が、税理士としての見識を広げる上でも何倍もためになったと実感しています。

税理士・会計士のためのコミュニティ「ふらっと」

セミナーや交流会の開催、会員インタビューの発信などを通じて、
互いの得意分野を活かした協業のきっかけや、業界の最新トレンドが集まるコミュニティです。
ぜひお気軽にご参加ください。

「綺麗な帳簿」はゴールじゃない。形式にとらわれず、経営者のリアルな悩みと向き合う

——独立後、実際の現場に立ってみて、想像していた税理士像とのギャップや新たな気づきはありましたか?

松田:業界に入って感じたのは、多くの人が「綺麗な仕訳帳や総勘定元帳を作ること」そのものを目的にしてしまっているんじゃないか、という違和感でした。もちろん正しい会計処理は大前提ですが、形式的な帳簿を完璧に仕上げたところで、経営者の事業が直接伸びるわけでも、経営者の生活が安定するわけでもありません。必要なデータが整合して読めればいいのであって、手段が目的化してしまっては本末転倒です。

——型にはまった作業ではなく、経営者の「手触り感のある悩み」に応えることこそが本質ということですね。

松田:まさにそうです。経営者が本当に求めているのは、「会社をどう大きくするか」「利益を残すにはどうすべきか」「融資の書類はどう書けばいいか」、あるいは「プライベートで家を買いたいが法人化や社宅はどう活用できるか」といった、自分たちの生活や事業に直結するリアルな相談なんです。

だからこそ私は、クラウドツールをフル活用して紙のやり取りや記帳作業の負担を削ぎ落とし、経営者が直接メリットを感じられる部分のサポートに全力を注ぐスタイルに舵を切りました。

AIをチームの一員に。1人事務所で実現する高付加価値な伴走支援

——現在は、AIの活用や士業コミュニティの形成にも非常に積極的に取り組まれているそうですね。

松田:1人事務所だからこそ、最新技術やネットワークは徹底的に活用しています。最近ではセキュリティが強固なAIのチームプランを導入し、顧客ごとのチャットログや会議録をすべて連動させて、顧客別に現状の課題や期限付きタスクを自動で整理・抽出してくれる仕組みを構築しました。まるで優秀なアシスタントがもう1人事務所にいて、全体をチェックしてくれているような感覚です。

——AIを単なる作業効率化ではなく、業務と思考のパートナーとして組み込んでいるのですね。今後の展望についてはどうお考えですか?

松田:5年後には申告書の自動作成が当たり前の時代になり、単なる「記帳代行」だけの事務所は淘汰されていくはずです。だからこそ、機械ができる作業から解放され、人間にしかできない「経営者の伴走」という本来の役割に立ち返るべきなんです。何事も一人で抱え込まず、税理士や公認会計士、その他様々な分野の専門家が集まるコミュニティへの参加や他士業との連携を通じて、自分の実力を磨き続けたいですね。

試行錯誤の末に見つけた「自分の軸」。一歩を踏み出したいあなたへ

——最後に、この記事を読んでいる同業の税理士・会計士の皆さんや、これから独立を目指す方々へメッセージをお願いします。

松田:私自身、会社員からの転身や受験での遠回りなど、たくさんの試行錯誤を繰り返してきました。でも、そこで得た「型にとらわれず、相手が本当に求める価値は何かを考える」という視点こそが、独立後の大きな武器になっています。試験や目の前の作業に追われている方もいるかもしれませんが、資格はあくまでスタートラインに過ぎません。通過点をクリアして、早く現場で経営者と向き合う醍醐味を味わってほしいですね。

士業の業界は今、大きな変革期にあります。従来のやり方に固執せず、使えるツールやコミュニティをどんどん頼りながら、自分なりのスタイルを追求していけば、税理士という仕事はもっと面白く、やりがいのあるものになるはずです。この記事が、日々悩みながら頑張っている先生方の小さなヒントや、一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいですね。

先生のご紹介

松田 光弘 [MATSUDA MITSUHIRO]
略歴:税理士。
法学部を卒業後、ケーブルテレビ会社で営業、新規事業開発・企画業務を経験後、手に職をつけるため税理士へ転身。税理士法人での実務経験や大学院での学びを経て、税理士資格を取得し独立。
1人事務所としてクラウドツールや生成AIをフル活用した業務効率化を徹底し、全国のクライアントに対応。輸出入ビジネス・アミューズメント関連などの事業者や中小企業の経営支援、融資・節税サポートに力を注ぐ。士業コミュニティやTKC全国会にも所属し、他士業との連携ネットワークを幅広く構築している。

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