税理士法人Y.K.C. 西澤 旭

50年の歴史とデジタル化が交差する場所——未経験から事務所のDX推進を担う、新風の仕掛け人

2026-07-2

西澤旭

「数字が好き。」その直感を信じて飛び込んだ会計業界

——西澤さんは、もともと介護業界や美容医療業界にいらしたそうですね。そこから未経験で会計業界へ転身されたきっかけは何だったのでしょうか?

西澤:前職では現場業務だけでなく、経営会議にも参加させてもらっていました。そこで売上や利益の推移、施策ごとの数字の変化を見る機会があって、「なぜこの数字になるのか」と考える時間がすごく面白かったんです。感覚的な判断ではなく、数字で意思決定していくプロセスに強く惹かれました。

それがきっかけで簿記を学び始めたのですが、仕訳や帳簿の構造がまるでパズルのようで、「これは自分に合っている」と感じました。2級を取得した頃には、「この分野で専門性を高めていきたい」という思いが固まり、未経験ではありましたが思い切って会計業界に飛び込みました。

——入社当初は戸惑いもあったのでは?

西澤:ありましたね。実は入社前は、税理士事務所が何をする場所かもよく分かっていなかったんです(笑)。ただ、実際に働き始めると、単なる数字の処理ではなく、お客様の経営に深く関わる仕事だと分かり、やりがいを強く感じるようになりました。

ベテラン職員との間に感じたデジタル化に対する価値観の違い

——現在の事務所に入社されてみて、最初の印象はいかがでしたか?

西澤:想像していた以上に、人間関係が温かい職場でした。税理士事務所というと静かに作業するイメージがあったのですが、日常的にコミュニケーションがあり、困ったときには自然と助け合う文化が根付いています。

ただ、業務面では紙資料や手入力が中心で、いわゆる昔ながらのやり方が主流でした。私が入社したタイミングが、ちょうどクラウド会計を本格的に導入しようという時期で、入社して間もない私が、その推進を一緒に担う部署に配属となりました。正直驚きましたが、「せっかくならやってみよう!」と前向きに捉えることにしました。

——未経験でいきなりDX推進担当というのは大きな挑戦ですね。

西澤:はい、かなりの挑戦でした。私にとってクラウドは効率的で便利なツールという認識でしたが、長年現場を支えてきたベテランの方々にとっては、手入力こそが正確で信頼できる方法なんです。「クラウドはミスに気付きにくい」「自分の手で確認した方が安心できる」といった声も多く、価値観の違いを強く感じました。

「便利さ」よりも「安心」を具体化する

——その壁をどう乗り越えたのでしょうか。

西澤:まず意識したのは、「変えること」よりも「理解すること」です。いきなり、未経験の私から新しいやり方を押し付けても受け入れてもらえないので、なぜ今の方法なのかという背景を丁寧に聞くようにしました。その上で、これまでのやり方を否定するのではなく「この作業だけでも少し楽にできるかもしれません」と、小さな改善提案を積み重ねていきました。

また、自分自身も既存の会計ソフトに積極的に触れるとともに、既存のスタッフにたくさん質問することを心掛けました。まずはこちらが頼ることにより、クラウド面の質問をしてもらいやすい環境づくりを優先しました。実際にやってみると、細かなチェックや積み重ねで精度を担保していることが分かり、「これは簡単には変えられない」と実感しましたね。

——単に「効率化」を掲げるだけでは、現場の不安は拭えなかったということですね。

西澤:はい。だからこそ、クラウドのメリットを伝える際も、「楽になりますよ」だけでなく、「この部分の確認作業はこう担保できます」と具体的に示すようにしたんです。結果として、少しずつですが「試してみようか」という空気が生まれていきました。

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効率化の先にある「人情」という名の強み

——DX化を進める中で見えてきたものはありますか?

西澤:業務の効率化を進めるほど、この事務所が大切にしてきた価値がより明確に見えてきました。それが「人情」です。お客様同士をつなげたり、経営の悩みに親身に寄り添ったりと、単なる業務を超えた関係性が築かれています。

実際にお客様とのやり取りを見ていると、「この人に相談したいからお願いしている」という信頼がベースにあると感じます。これはどれだけシステムが進化しても代替できない価値だと思います。

——DX化との両立が鍵になりますね。

西澤:そうですね。人情を大切にするためにも、事務作業に追われすぎない環境が必要です。単純作業を減らし、思考や対話に時間を使えるようにすることが、本来の価値提供につながると考えています。

DX化と人間らしさは対立するものではなく、むしろ補完し合うものだと思っています。そのバランスをどう設計するかが、これからの事務所運営において重要だと感じています。

30歳の節目に描く未来。新たな価値提供で経営者の意思決定を支える

——今後のビジョンをお聞かせください。

西澤:今年で30歳という大きな節目を迎え、自分のキャリアを改めて見つめ直しています。まずは税理士資格の取得という大きな目標に挑みつつ、現場での提案力や、お客様の困りごとに即座に応えられる対応力を磨き上げたいと考えています。

私たちは経営者の一番近くで、その背中を支える存在でありたい。お客様が経理業務に追われ、本業に集中できない時間は本当にもったいないと感じるんです。経理で困っている方には、「明日から私たちがサポートに行きますよ」と迷わず即答できるような、柔軟でタフな組織を作っていくのが理想です。

——その想いが、新しい取り組みにも繋がっているのでしょうか?

西澤:まさにそうです。今、チームで設計している「経理代行」や「未来会計」は、単に過去の数字を整理するためのものではありません。特に未来会計は、集まったデータをもとに「次はどう動くべきか」という戦略を経営者と一緒に考えていく取り組みです。

数字を単なる「結果」で終わらせず、次の一手を決めるための「意思決定の材料」として活用していただく。私たちが事務作業という重荷を肩代わりし、経営判断のための“地図”をお渡しすることで、経営者の方が本来使うべき所に時間を使えるようにしたいんです。50年の歴史がある事務所だからこそ、積み上げてきた信頼をベースに新しい価値を届けていければと考えています。

横の繋がりを広げ、業界全体を面白いものにしたい

——最後に、読者へのメッセージをお願いします。

西澤:この業界はどうしても内向きになりやすい側面がありますが、外に目を向けることで得られる気づきはとても多いと思います。一歩外に出て、他の事務所の取り組みや異業種の考え方に触れることで、自分たちの強みや課題がより明確になるはずです。

私自身もまだ試行錯誤の途中ですが、同業の方々と情報交換しながら、お互いに高め合っていけたら嬉しいです。業界全体がより魅力的で活気あるものになるよう、一緒に盛り上げていきましょう。

先生のご紹介

西澤 旭 [NISHIZAWA ASAHI]
略歴:介護・美容医療業界から未経験で会計業界へ転身。
前職での経営会議への参加を通じ、数字による意思決定の重要性に惹かれ、簿記2級を取得。50年の歴史を持つ税理士事務所にて、入社直後からDX推進担当としてクラウド会計の導入を担う。
DX化による事務作業の効率化と、事務所がこれまで培ってきた「人情」ある顧客対応の両立に注力。現在は税理士資格取得に挑みつつ、経理代行や未来会計を通じて経営者の意思決定を支える仕組み作りに奔走している。

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