税理士法人TOTAL【税理士/行政書士】高橋 寿克
官僚・政治家志望から税理士へ——困難を乗り越えた先で見出した社会貢献への志
2026-02-6
マネーフォワード株式会社とふらっとのコラボレーション企画がスタートしました。
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、バックオフィスのDX化を推進するマネーフォワードと、士業の情報発信を支えるふらっとが特別企画を実施します。
デジタル化が加速する中、士業の皆さんがどのようにテクノロジーを活用し、業務効率化やクライアントへの価値提供を実現しているのか。
ふらっとでは、その変革のプロセスを掘り下げるインタビューシリーズとして、今回、税理士法人TOTAL 高橋 寿克 氏に取材しました!
—— まずは、税理士を目指した経緯についてお聞かせください。
高橋:元々は「天下国家のために働きたい」という思いで、官僚から政治家を目指していました。ところが開成中学3年生の時に、コロナのように免疫を壊す難病の「世界で第1号の男性患者」になってしまいました。病気の副作用もあり東京大学の受験に失敗し、実質的に官僚の道は絶たれました。
その事実から逃げるように司法試験を受けたのですが、論文試験を受験する前に身体が限界を迎えてしまいました。そこで、「自分の体力を考慮しつつ、生きていく方法は何か」を考え、税理士試験を受けることにしました。
—— 税理士として最初に働かれた事務所ではどのような経験をされたのですか?
高橋: 地元の千葉県船橋市にある税理士事務所に就職し、業務に携わりました。初めての税務調査の際に、司法試験受験で学んだ法律の知識を活かし、税務署が主張する追徴課税を大幅に抑えました。そのため、事務所内では難しい案件を任されることが多くなりました。
また、所長が「標準化」を推進していたこともあり、普通であれば1人分の確定申告書を作るのに半日前後かかるところを、私たちは15分で作成できました。生産性で言うと、同業者の10倍くらい効率化して業務を行っていました。
独自の戦略で突破した集客と採用の壁
—— 独立後は、どのような営業活動を展開されたのですか?
高橋: 独立当初は営業経験がなかったため、高校や大学の同窓会、青年会議所、商工会議所やロータリークラブといった様々な交流会へ参加しました。また、勤務時代の所長の教えに従い、特に必要と感じなくても銀行借入をして借金をするお客様の気持ちを理解し、銀行との縁づくりにも励みました。幸いなことに、ちょうどWEB集客が始まった時代だったので、手作りでホームページを作成したのですが、検索すると船橋では一番目に表示されるようになりました。
ただ、その一方で採用という課題に直面しました。専門学校の就職説明会に参加しても、他の大手事務所は行列ができているのに当事務所だけほぼ誰も来ないありさまでした。船橋の中でも田舎で、知名度がない点が敬遠されていたのかもしれません。そこで、ブログを始めました。
—— ブログが採用活動にどのように機能したのでしょうか?
高橋: 当時、どこの大手税理士事務所も採用に困っていなかったので税理士事務所の就職情報はほぼありませんでした。そこで、税理士受験生向けに求人・採用・就職情報を初めて作成しました。税理士事務所の規模別、種類別の特徴や選び方などを記事にし、ブログに来た質問にも答えて発信し続けたんです。
また、質問を通じて、業界全体が税理士受験生だけでなく、当時は未経験者、特に女性に対して十分な活躍の場を提供できていないことを痛感しました。非常に高い能力を持ちながら、家庭の事情などでキャリアを断念せざるを得なかった女性も大勢おられました。それではいけないと、そうした方々がポテンシャルを発揮し、税理士を目指せる環境を整えていきました。また、私が、仕事と受験の両立に苦しんで退職して受験に専念せざるを得なかったので、税理士試験の受験を専門学校の学費全額補助や担当割等で工夫して支援し、徐々に採用にも結びつくようになりました。その結果として、私たちの事務所からは12年連続で税理士試験最終合格者(いわゆる『官報合格者』)を輩出しています。これは、BIG4以外の事務所としては記録的な数字ではないかと思っています。
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組織の崩壊から学んだ、スタッフマネジメントの大切さ
—— 組織作りの面で、大きな壁に直面されたと伺いました。
高橋: ある時、集客に夢中になって内部を見ていなかったこともあり、事務所(私)に対する不満がスタッフの中で募っていきました。仕事中に幹部によるクーデターが起き、当時17人いたスタッフのうち、約3分の1が半年以内に辞めてしまい、事務所が一度、崩壊しました。
大きなショックを受けましたが、この経験こそが私に「お客様に貢献するためには、まずはスタッフを大切にすること」という、経営の本質的な気づきを与えてくれました。数字を追うばかりではなく、組織の内側にも目を向けることが重要だったのでしょう。
—— その後、どのように組織を立て直していったのでしょうか?
高橋: ちょうどそのタイミングで、開成高校の同級生である共同代表の沓掛伸幸さんが合流してくれました。彼は大手金融機関の本部で組織の標準化と内部管理の経験があったため、次第に事務所は安定していきました。彼が加わったことで、税理士法人化し、東京にも進出することができました。
~あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい~
— 組織拡大の中で、M&Aも実施されたのですね。
高橋: はい。最初のM&Aで合流してくれた早稲田大学の先輩の井上貴司税理士が、医療クリニックの開業部隊を持っておられました。私たちの標準化の強みと組み合わさったこともあり医療部門を強化することに成功したんです。その後のM&Aすべてが成功したわけではありませんが、失敗を通じて、どうすれば合流してくれた税理士事務所のお役に立てるかを学ぶこともできました。今では税理士法人TOTALの強み(総合型の事務所で、採用に強く、IT人材の専門部署もある等)が生きる、お互いに信頼できるwin-winの関係になる相手を見極めながら進めています。
—— 今後の事務所の展望についてお聞かせください。
高橋:会計業界は他の産業と同様に寡占化が進むと考えています。日本の人口減少もその流れを加速させるでしょう。税理士法人TOTALは新卒採用を6年くらい前から本格的に始めています。若いスタッフが多くいるので教育をきちんとできれば、近い将来に1000人、そしてその後も安定した成長を続けるでしょう。今後はより魅力的な事務所にするためにコンサルティングや、M&A支援等の高収益な部門をより拡張したいと思っています。
なお、大手税理士法人17社が集まって、24年のクリスマスに「一般社団法人 会計事務所連携協議会」を立ち上げました。情報交換をしながら、業界内で「競争」するのではなく、「共創」して税理士業界全体を盛り上げることを目指そうと話し合っています。今後は徐々に会員事務所を増やしていく予定です。
また、TOTALの経営理念である「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」と「みんな違ってみんないい」(金子みすゞの詩)に基づき、ダイバーシティとインクルージョンの両立を目指しています。両立は難しいですが、そうすることで社会そして日本にも貢献したいと考えています。
税理士業界と社会を、共に変えていきたい
—— 最後に、これから税理士業界を目指す方々へメッセージをお願いします。
高橋: 私は、元々は、体を壊したために消去法で選んだ仕事が税理士でした。今はこの仕事で良かった、『天職』だとすら思っています。
税理士という仕事は、本当にやりがいのある職業です。普通はお会いできない経営者・資産家に直接お会いすることができ「ありがとう」と言ってもらえます。また、税理士の平均年齢は60代なので人生100年時代に定年もあまり意識せずに長く働ける珍しい仕事でもあります。新しい情報を取り入れる努力さえ続けられれば、人脈・過去の経験が生きるでしょう。私は、経営者はあと10年で引退する予定ですが、仕事は大好きなのでお客様さえよければ『一税理士』としては、生涯現役でいたいと思っています。
一緒に、この税理士業界と社会を変えていく、そんな一歩をあなたも踏み出してみませんか。
先生のご紹介
高橋 寿克 [TAKAHASHI HISAKATSU]
略歴:税理士、行政書士、CFP、医業経営コンサルタント
中学3年生で難病を発症。東大受験失敗、司法試験の断念を経て税理士の道へ。千葉県の会計事務所で標準化による業務効率化を学び、独立。ホームページとブログを活用した採用戦略で優秀な人材を獲得し、12年連続の税理士合格者輩出を実現。現在は大手税理士法人17社による「一般社団法人 会計事務所連携協議会」に参画し、「あなたと共に歩み、あなたと共に成長したい」という経営理念のもと業界全体の発展も目指している。
所在地:静岡県浜松市中央区鍛治町140 浜松Cビル4階