最高のIT税理士法人【代表社員税理士/行政書士/FP】戸越 裕介
「関わる全ての人を幸せに」——経営危機を乗り越えた代表社員税理士の組織づくりの哲学
マネーフォワード株式会社とふらっとのコラボレーション企画がスタートしました。
「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、バックオフィスのDX化を推進するマネーフォワードと、士業の情報発信を支えるふらっとが特別企画を実施します。
デジタル化が加速する中、士業の皆さんがどのようにテクノロジーを活用し、業務効率化やクライアントへの価値提供を実現しているのか。
ふらっとでは、その変革のプロセスを掘り下げるインタビューシリーズとして、今回、最高のIT税理士法人 戸越 裕介 氏に取材しました!
紹介で成り立つ好循環を生んだのは「人のつながり」
—— 現在の事務所の規模を教えてください。
戸越: スタッフ約70名で運営しており、採用と集客の大半が紹介で成り立っています。「税理士業界は人が全て」という想いと「スタッフを大切にする」という方針が、結果的にこの形に繋がったと考えています。新規のお客様も、主に紹介経由であるため、広告費や採用コストもほとんどかけておりません。
—— 好循環が生まれた背景には、何があったのでしょうか?
戸越: 特別な戦略があったわけではなく、試行錯誤の中で「人のつながり」が経営の核になっていった感じです。良いスタッフが人を呼び、お客様が新たなお客様を紹介してくれる。その積み重ねでした。
娘の「パパ、今日は来たの?」という一言が考えを改めるきっかけに
—— 過去には厳しい時期もあったそうですね。
戸越: 実は3年前、事務所は今の状況とは全く違っていたんです。お客様が増えるのは嬉しいことなんですが、増えるスピードが早すぎることから、スタッフの残業も増え、品質も低下していきました。私自身も朝7時から翌日の4時まで働き続けるような状況が続き、正直なところ、事務所の売却を検討するほど追い詰められていました。
そんな中、珍しく早く帰宅した日に当時4歳の娘が「パパ、今日は来たの?」と言ったんです。親として守りたいものを守れていない、そう痛感した瞬間でした。その時に初めて「いくら頑張っていても、誰かを犠牲にすることで成り立つ経営は、本当の成功ではない」ということに気づいたんです。
—— その気づきをきっかけに、改善に向けてどのような取り組みをされたのですか?
戸越: 改善の第一歩は、時間の使い方を根本から変えることでした。一般的に、仕事には「緊急かつ重要」「緊急でないが重要」「緊急だが重要でない」「緊急でも重要でもない」という4つの象限がありますが、これまでの私は目の前の緊急業務ばかりに追われていました。
目標達成に関する学習を通じて「緊急でないが重要」な領域の大切さに気づかされました。「会社の未来を考える時間」「マネジメント」「組織づくり」など、今は見返りがなくても未来に繋がる活動にこそ時間を投じる必要があると確信したことが、現在の事務所の方針 を構築する原点となっています。
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経営理念は「自分自身」を含めて「全ての人を幸せに」すること
—— 事務所の理念についてお聞かせください。
戸越: 「私たちに関わる全ての人を幸せにする」です。ここで重要なのは「全ての人」にはお客様、スタッフ、取引業者、家族、そして自分自身も含まれるということ。日本の経営者は自己犠牲の傾向が強いですが、これではうまくいきません。
—— 理念の中に、自分自身を含めた理由は何でしょうか?
戸越: 「持っているものしか与えられない」という言葉があります。たとえば水を誰かに分け与えたくても、自分が水を持っていなければ渡せません。同じように、お金も時間も、自分が豊かでなければ他者に与えることはできない。より多くの人に幸せを分け与えたいなら、まず「自分自身が幸せになる」必要があるんです。
朝から夜中まで働いていた時代、結果的に周囲に迷惑をかけていました。余裕がなければ、人に辛く当たることもある。だからこそ、自分も含めて全員がバランスよく幸せになっていく道を選びました。
大切なのは「お客様」と「スタッフ」を幸せにする7つの指針
—— 理念を実現するために7つの指針を定められているそうですね。具体的にお聞かせいただけますか?
戸越: まず、お客様との向き合い方で大切にしている「質」「スピード」「理解」「提案」という4つの指針があります。
質が高いだけでは意味がありません。たとえば12月の決算数字を1円単位で完璧にするために半年かかったとしたら、品質は高くても、お客様が求めるものとは異なります。かといって、スピードだけ重視して数字が乱れていても困りますよね。つまり、「質」と「スピード」のバランスが大切なんです。
同様に、「理解」と「提案」も両立させる必要があります。過去の数字から現状の課題を認識していただいたうえで、未来に向けてどう行動すべきかを提案する。根拠なく未来の話ばかりしてもいけませんし、過去の数字ばかり追ってもいけません。この4つのバランスを整えることが、真のお客様支援だと考えています。
—— 他の3つの指針は、どのようなものですか?
戸越: スタッフを幸せにするための「成長」「環境」「お金」という3つの指針です。「成長」に関しては、成長したいと思っている人を全力で支援する仕組みを作りました。資格取得の学習費用の支援、合格時の奨励金、試験前の休暇取得の柔軟化など、様々な制度を整備しています。
また、環境に関しては、「週1回の全体ミーティングやメタバースでの交流」や「良いところだけを評価する360度評価」を導入しました。フルリモート・フルフレックスを導入しているため、全員が1箇所に集まることが難しく、人間関係が希薄になりがちです。さらに会計業界には「ミスを指摘し続ける構造」があるため、こうした環境面の課題を少しでも改善する取り組みを行っています。
実際に導入してみると「その人の良いところが全く思いつかない」という場面が出てくるんですが、これは良い気づきです。相手を苦手だと思ってしまうと、その人の良さが見えなくなってしまうため、意識的に良さを見つける練習が必要です。このような新しい評価手法なども導入し、人間関係の改善に取り組んでいます。
スタッフ自身が「自分たちで気づく」仕組みで未来を変える
—— スタッフの意識変化に向けて、どのようなアプローチをされていますか?
戸越: 私は「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」という言葉が好きです。人を変えることは難しいですが、自分を変えることはできます。360度評価や理念研修を通じて、スタッフが「自分たちで気づく仕組み」を作ることを心がけています。
—— どのような手応えを感じていますか?
戸越: 変わりたいと思ったメンバーから確実に変わっています。「部下のために頑張りたい」「もっとよくしていきたい」と思ってくれた人が自分たちから動き、成長したいと思った人を成長させていく。そういう仕組みが本当に大切なんです。
日本を良くする第一歩は「税理士業界を面白くすること」
—— 最後に、税理士業界への想いをお聞かせください。
戸越: 私は「税理士業界全体を良くしていきたい」と本気で考えています。業界そのものが面白くなれば優秀な若手人材が集まり、中小企業への支援体制がさらに整っていく。日本企業の99%は中小企業です。その企業層が良くなることは、結果として日本全体が良くなることに繋がると思っています。
—— その実現に向けて、読者にどんなメッセージを届けたいですか?
戸越: 成長にコミットできる環境を求めている人材は、確実に存在しています。私たちの事務所では広告費をほとんどかけていませんが、毎月50通以上の履歴書が届きます。これは、待遇だけが理由ではなく「業界を変える」というビジョンが響いているのだと思っています。一緒に税理士業界を面白くしていき、中小企業の支援体制を整えたい。そんな仲間との出会いを、心待ちにしています。
先生のご紹介
戸越 裕介 [TOGOE YUSUKE]
略歴:代表社員税理士・行政書士・FP。
税理士として中小企業の支援に従事。3年前の経営危機を機に、タイムマネジメントと組織理念の構築に取り組む。「私たちに関わる全ての人を幸せにする」という理念のもと、顧客とスタッフを大切にする7つの指針を掲げ、組織を運営。「採用・集客の大半が紹介」という好循環を実現させながら、現在、税理士業界全体の魅力向上と中小企業支援体制の充実を目指し活動中。
所在地:【静岡オフィス】
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