前川大地税理士事務所【税理士】前川 大地
「創業から承継まで」寄り添うために辿り着いた税理士としての答え
「資格を取ろう」から始まった長いキャリア
—— まずは、これまでのご経歴についてお聞かせください。
前川:大学卒業後に半年ほど税理士試験の勉強に専念した後、株式会社AGSコンサルティングに入社し、大阪支社で約10年間勤務しました。試験は学生時代から5年間受験し、2017年12月に合格、2018年3月に税理士登録を完了し、2025年8月1日に独立したという流れです。
—— 税理士という職業を選ばれたきっかけをお聞かせください。
前川:大学入学当初は将来が漠然としていて、就職への不安から「資格を取ろう」と思いました。経営学部で簿記を学び、2級まで取得したのがきっかけです。公認会計士も考えましたが、短期集中で勉強する必要がありまして。当時私は卓球部に所属していたのもあり、部活と両立しながら学習を進められる税理士試験を選びました。
実は、税理士の仕事内容は全く知らずに受験を始めたんです。最初の試験で2科目受けて、両方合格したら続けよう、1個でも落ちたら普通に就職活動をしようと決めていました。幸い両科目とも合格したので、そのまま税理士の道を歩むことになりました。
濃密な成長期間を経て芽生えた「事業に貢献したい」想い
—— 実際に働き始めてみていかがでしたか?
前川:大阪支社は当時はまだ組織として発展途上にあり、人員が少なかったため、入社直後から税務顧問のお打ち合わせも一人で行かせていただいたり、M&Aの調査に携わったり、営業に同行させていただいたりと、比較的自由に幅広く経験させていただきました。最初は自分の力不足を痛感しましたが、仕事は新鮮で刺激的でした。
毎日朝8時に出社し、掃除したあと9時から夜遅くまで働き、土曜も仕事、日曜は専門学校に通う日々。お金を使う暇もなく生活はハードでしたが、多くの経験を早い段階で積めたことは大きな財産です。
—— 独立を考えるようになったきっかけをお聞かせください。
前川:入社から5年ほど経った頃です。税理士としてある程度話せるようになったものの、「事業のことはまだ何もわかっていない」と感じて、「もっと事業に貢献できる税理士になりたい」という思いが芽生えました。
コロナ禍で時間ができ、事業の勉強を重ねる中で、大手顧客中心で上流コンサル重視の会社の方向性も好きでしたが、必要に応じて他の士業の方と協業しながら、顧客の創業から承継まで一貫して支援することもやっていきたいなという気持ちも芽生え、少しずつ独立という道もありなのかなと考えるようになりました。
決定打となったのは、2022年に入社した妻の存在です。彼女は非常に独立志向で、私の独立にも賛成してくれました。そこから2年半ほどかけて引き継ぎの準備を進め、独立に至りました。
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独立で得た「経営者と同じ目線」という財産
—— 独立後に直面した課題と、逆に良かったことをお聞かせください。
前川:最初は売上をどう作るかが大きな課題でした。前職からのお客様もいらっしゃいましたが、売上よりも経費の方が高くついている状況で、「どうしよう」と悩む日々でした。現在は様々な場所に顔を出すことで、ご紹介いただける案件が増え始めていて、独立当初よりは落ち着いています。
良かったことは、自由度の高さです。今年9月に子どもが産まれたのですが、会社員時代には絶対にありえなかった時間を家族と過ごせるようになりました。
予想外だったのは「経営の感覚」を身につけたことです。独立前は、会社を運営する上での様々な経費をどの程度かけていくかという話に触れることがありませんでした。そういった決断を自分で行うようになり、お客様とも同じ立場で話ができるようになったのは大きな変化です。また、人脈の重要性も再認識しました。独立前と独立後では、周りの方々から話される内容も変わりますし、自分の感覚や話し方も変わってきています。
「創業から承継まで」ぶれない支援の軸
—— 今後の事務所の方向性についてお聞かせください。
前川:特定の業界や分野に特化するのではなく、「本当に良い人と長く、創業から承継まで」関わりたいというのが私の強い思いです。営業上は難しいかもしれませんが、ここはぶらさず守りたい軸です。
事務所の規模を大きくしていく際には、ある程度の業務標準化や分業も必要になるかもしれません。しかし、基本方針として創業から承継まで一貫してサポートできる体制を目指したいと思っています。もしスタッフがお客様と一緒に独立するなら、それはそれで良いことだと考えています。有名な事務所になりたいという気持ちはありません。
バランス感覚を大切に一歩踏み出そう
—— 独立を目指す税理士・会計士の方々へメッセージをお聞かせください。
前川:独立するかどうかは人それぞれですし、その気持ちに従っていただきたいと思います。ただ、私たち税理士は税の責任を重く受け止めながら、経営の意思決定にも関わる立場です。納税者としての適正性、事業としての成長性といった両方の視点が交差する現場で、双方の論理を翻訳し、現実的で納得感のある落としどころを設計する「バランス感覚」が大切だと感じます。
お客様に寄り添い、伴走する姿勢は大切です。同時に、専門家として事実に基づき線を引き、必要なときは客観的な視点でアドバイスする役割も欠かせません。この両立が求められる仕事は、世の中でも多くはないはずです。
独立すれば多くの事業者と話す機会が増え、どういう方がうまく伸びているか、そうでないかを見ることができるようになります。楽しみつつ、期待と不安を抱えながら、一歩踏み出してほしいと思います。
先生のご紹介
前川 大地 [MAEKAWA DAICHI]
略歴:税理士。大学卒業後、株式会社AGSコンサルティングに入社。税務顧問のみならず、M&Aや事業承継・再生支援など幅広い実務を経験。税理士として仕事をしていくなかでコロナ禍を機に、「もっと事業に貢献できる税理士になりたい」という想いを感じ始めたことから2025年8月に独立。現在は特定の業界や分野に限定することなく「本当に良い人と長く、創業から承継まで」を軸とした事務所を運営している。
所在地:大阪府大阪市北区天神西町5番9-505号
HP:https://www.raicho-sanbou.com/