AIと地方から挑む、新しい税理士のかたち

「父や祖父が感謝されている姿」こそ、税理士のキャリアの原点

—— まず、税理士を目指された経緯についてお聞かせいただけますか？

杉山：私は祖父と父に続く3代目ですが、学生時代に父が病で倒れたことが大きな転機でした。当時、祖父が立ち上げた事務所は地域の別の税理士事務所に吸収されました。その事務所に新卒で入社し、10年間勤めたことが、私の税理士としての出発点です。

—— 子どもの頃から税理士の仕事に触れていたのですか？

杉山：はい。父や祖父がお客様に感謝される姿を何度も見ました。自宅にかかってきた電話で「助かりました」と言われるたび、「人の役に立てる仕事だな」と感じていました。事務所がなくなった後も「いつか税理士になりたい」という思いは変わりませんでした。

業務効率の課題に直面する中で出会ったクラウド会計

—— 在職10年を経て独立を決意されたのは、どのような経緯からでしょうか？

杉山：前職では税務関連業務の傍ら、業務改善や業務効率化にも携わっていました。複数の会計ソフトや税務ソフトを扱っていたため、特にデータ連携が課題だったので、ソフト間の橋渡しをマクロやRPAといたソリューションで解決する取り組みをしていました。

しかし、そういった部分は本来システマチックに自動化すべきで、税理士が生み出すべき付加価値は顧客との対話やコンサルティングです。その解決策として、会計から申告まで一気通貫にできるクラウド会計に魅力を感じました。大学院時代の同期がクラウド会計を専門にしていて「こういうやり方もある」と知っていたのも大きかったとおもいます。

—— 導入後の変化はいかがでしたか？

杉山：顧問契約の初期段階で仕組み作りに注力しました。お客様が自由に操作して混乱しないよう、初期セットアップを初期費用としていただき、顧問料に含める形で提案しています。この方法でお客様も私たちも安心して関われます。

AI活用をサポートし、やりたいことに没頭できる社会を目指して

—— 最近はAI分野にも取り組まれていますね。きっかけは何ですか？

杉山：在職中からAIが業界に変革をもたらすと感じていました。最初はウェブセミナーに参加しただけでしたが、可能性に衝撃を受け、独学で深く学び始めました。

—— 背景には何かあるのでしょうか？

杉山：子どもの頃からコンピューターやインターネットが好きで、古いOSや電話回線時代のネットも触っていました。その経験でITやトラブル対応への理解が深まり、AIも自然に受け入れられました。

AIは私のこれまでの経験と融合する領域です。税理士として個人や地方中小企業のAI活用に取り組むことで、DXを促進し、ビジネスパーソンがやりたいことに没頭できる社会を作りたいと思っています。

地方から全国に発信、枠に囚われない税理士のあり方

—— 岐阜で先進的な取り組みをされていますが、地域に対する思いはありますか？

杉山：岐阜は保守的な土地ですが、新しいことに挑戦したい事業者もいます。地方で成功事例を作り、それを全国に発信することで「地方でもできるなら、どこでもできる」というメッセージを伝えたいんです。

—— 地域発のメッセージが全国に届く形ですね。

杉山：はい。税理士の枠に囚われず、ITやAIを活用してお客様の成長に寄り添う。それが今の時代に求められる税理士のあり方だと思います。

AIを武器に自らのフィールドを創造しよう

—— 最後に、税理士を目指す方やキャリアに悩む若者にメッセージをお願いします。

杉山：税理士はAIに仕事を奪われる職業とよく言われますが、それは従来のやり方に限った話です、AIは業務を効率化し、新たな価値を創出する強力な武器で、業界の既成概念を大きく変える力を持っています。

「AIを使いこなせる世代」が業界に入れば、古いやり方を変える力を持つことができます。面白い時代です。AIを活用して自らのフィールドを創造する、新しい税理士像を一緒に作っていきませんか？