德元 利貴

税理士事務所まどか【税理士】德元利貴

危機感から一転、21歳で合格した税理士の軌跡

中学受験で芽生えた将来への焦りと税理士の夢

—— まずは、税理士を目指されたきっかけを教えてください。

德元: 税理士を志したのは、中学3年生の頃です。まさに受験という時期にも関わらず、当時勉強を全くしていなかったせいで、1桁の点数を取ってしまって。100点満点中、しかも高校進学の内申に影響する大事なテストで。その瞬間、さすがにやばいと思いました。「このままじゃ、お先真っ暗や」と本気で焦りました。

—— それは、かなりの衝撃的ですね!

德元: 家庭がさほど裕福ではなかったので、その反動から「お金に余裕のある生活をしたい」と思っていたはずが、さらに厳しい未来しか見えないことに気づきました。進路はもちろん、将来についてももっと真剣に考えなければならないと考えを改めたんです。

でも、今さら受験勉強に必死になっても周りには追いつけないことも分かっていたので、「周りがやっていない道を選べば一番になれる」と考えました。調べた結果、出会ったのが商業高校の簿記、そして税理士という職業でした。当時のネットに「平均年収が高い」とあったのも後押しでしたね(笑)。

—— 実際に簿記を学んでみてどうでしたか?

德元: 商業高校に進学し、いざ会計を学んでみると、人生で初めて「勉強が楽しい」と思えました。学習分野が自分の性に合っていたからか、明確な目標ができたからかは分かりませんが、そのまま専門学校へ進み、21歳で税理士試験に合格しました。

修行時代に味わった、信頼を失う怖さと選ばれる喜び

—— 21歳で合格とは、早いですね!その後は修行の時代ですか?

德元: はい。最初に入った事務所がすごく良くて、面倒見のいい先輩たちに鍛えてもらいました。本当は複数の事務所を渡り歩くつもりでしたが、難しい案件も任せてもらえたので、結局8年間勤めました。

—— その中で特に印象に残っている経験はありますか?

德元:忘れられない出来事といえば、やっぱり苦い経験です。建設業のお客様を引き継ぐ際、上司の一言がきっかけで大激怒され、その場で契約解除になったことがありました。「お客様のプライドに触れると信頼は一瞬で崩れる」そう悟った瞬間です。自分の言葉に責任を持たねばと痛感しました。

反対に、良い出来事として記憶しているのは、大手商社の社長にデューデリジェンスへの同行を誘われたことです。閉鎖的だった事務所にいながら、東京の大企業の現場に立ち会えたのは刺激的でした。何より「会社の指示」ではなく「德元に来てほしい」と言っていただけたことが嬉しくて。お客様に選ばれることの重みを知りました。

好奇心に後押しされて決断した独立の道

—— 独立を決断された理由は?

德元: もともと20代で独立したいと思っていたのと、このまま勤め続けて将来の自分を想像した時に「違う」と感じたからです。もっと自由に、自分の責任で挑戦したいと思いました。宇治市や京都市だけじゃなく、もっと遠方のお客様のもとへ行ってみたい。そういった色んな好奇心に後押しされて独立した感じです。

—— 実際に独立してみていかがでしたか?

德元: 最初は本当にゼロからで、通帳の残高が減っていくのが怖かったです。人脈もなかったので、信用金庫の全支店に電話してアポを取り、セミナーをやらせてもらったりしました。テレアポもやりましたが自分には向かず、一瞬で心が折れました(笑)。でも、その積み重ねで少しずつ紹介が増え、今は17名の仲間と仕事ができています。

「円満」を守り、より付加価値の高いサービスを

—— 今後の展望について教えてください。

德元: 事務所の理念は「円満」です。お客様の円満、スタッフの円満のために、満足度の実現を目指していくことが事務所の成長につながると考えるからです。順番としては、やっぱりお客様の円満から。顧客の円満によって自分たちの円満がつくられると思っています。

ただ、今強い危機感を抱いているのがAIです。先日、AIによる自動記帳システムを見て「もうここまで来ているのか」と衝撃を受けました。いずれ記帳代行業務がなくなることは目に見えています。数年以内に必ず訪れる未来だからこそ、波にただ乗るのではなく「壊す」側に回らないといけない。そう感じています。

—— 壊す側、というと?

德元: 私たちは、記帳代行に代わる新しい価値をつくる必要があります。より付加価値の高い業務を人間が請け負うことで、AIには置き換えられない高品質なサービスが提供できると思うんです。

経営者の悩みは尽きません。だからこそ、私たちは対話を通じて本当に困っていることを引き出し、解決できる人や方法を一緒に探す「伴走者」でありたいと思っています。

AIの到来を恐れず、人間にしかできない役割を追及しよう!

—— 最後に、読者へメッセージをお願いします。

德元: よく「税理士の仕事はAIに奪われる」と言われますが、無くなるのはあくまでも事務作業であって、「経営者の不安や孤独を解消する役割」は人間にしかできません。

むしろ今こそ、人ならではの付加価値を追求できるチャンスだと思います。将来に不安を抱いている方がいれば、「心配はいらない」と伝えたいですね。

先生のご紹介

德元 利貴 [TOKUMOTO TOSHIKI]

略歴:税理士。中学3年生で「税理士」を目指し、商業高校、専門学校を経て、21歳で税理士試験に合格。8年間の税理士事務所勤務の後、29歳で独立。現在は、従業員17名の事務所を経営し、京都を中心に記帳代行から企業の経営課題解決まで幅広く支援。顧客の満足を実現し、スタッフも物心両面で満たされる「円満」の好循環を目指している。