能上 高行

かぐら税理士法人【代表社員/税理士】能上 高行

大学3年の夏の「原体験」から生まれた“行動派の税理士”の軌跡

バイト代の税への疑問と好奇心が、税理士キャリアの原点

—— 先生が税理士を目指されたきっかけについて、お聞かせいただけますか?

能上: きっかけは、大学3年の夏休みに「税理士」という職業を知ったことですね。

当時、スポーツジムでアルバイトをして頑張って働いて、その月は9万円くらい稼いだんです。ところが、明細を見たら「源泉所得税」が引かれていて。当時、何も知らなかった僕は「自分が何か悪いことをして罰金を取られたんだ!」と本気で勘違いしたんです(笑)社員さんに聞いても答えは出なくて、気になって調べてみたら「源泉徴収」だと分かりました。

当時ちょうどFPの勉強も始めていたので、「税金って難しい、でも知らないと損をする。困っている人も多いんじゃないか」と感じました。その延長で「税理士」という職業を知り、キャリアが始まったんです。

—— 大学3年の秋には専門学校に通われたそうですが、周りは就活や遊びで忙しい時期、モチベーションはどこにあったのでしょう?

能上: 正直、友人が遊んでいるのを見ると気持ちが揺らぐこともありましたね。でも、自分で決めて動き出したので、後戻りはできない。就活もしていない以上「もう受かるしかない」と腹をくくっていました。大げさに言うと、背水の陣でしたね。

—— その覚悟が見事、力になり、資格を取得されたわけですが、その後、大手税理士法人に進まれたそうですね?

能上: はい。最初から「いつかは独立する」と決めていたので、修行の場としてデロイトトーマツを選びました。将来の自分のために、まずは大きな舞台で経験を積みたかったんです。

銀行に転職後、立ち止まって考えた「やりたいこと」

—— しかし、その後、信託銀行に転職されたそうですが…?

能上: デロイト時代はとにかく忙しくて、独立への思いが一度薄れてしまっていまして。とにかく「働き方を整えたい」と思い、銀行へ移ったんです。深夜残業もなくなり、環境は良くなりました。

そこでようやく立ち止まって「自分は何のために税理士資格を取ったんだろう」と考えるようになりました。

銀行では会計や税務以外の仕事も多く、「これが本当にやりたいことなのか?」と自問自答が続きました。その時、「そうだ、自分は独立したかったんだ」と思い出したんです。

—— そこから独立に踏み切られた。

能上: はい。考える前にまず動くタイプなので、決めてから2ヶ月で退職しました。税理士法人と銀行で8年間の経験を積み、31歳で独立しました。

顧客と向き合うために「分からないことを放置しない」

—— 独立後、事務所運営で大切にされていることは何ですか?

能上: 一番は「対話」です。相手の言葉の裏にある想いやヒントを見逃さないよう、ミーティング中は全神経を集中させています。もう一つは「分からないことは放置しない」こと。専門外の用語が出たら、その場で必ず聞くようにしています。

—— 聞くのは勇気がいりますよね。

能上: 昔はそう思っていました。でも実際には「興味を持ってくれている」と、経営者の方々はむしろ喜んでくださるんです。分かったふりをするより、素直に「知りたい」と伝えることが信頼につながる。小さなプライドを捨てる勇気を学びました。

「対話」を重視した結果、税務会計以外の相談にも応じています。今は顧問契約の延長として行っている形ですが、いずれは正式なサービスにしていきたいと思っています。経営者の多様な悩みに応える「伴走者」として、もっと幅広く関われる存在を目指したいですね。

独立を考えている人へのメッセージ

—— 最後に、独立を考えている税理士・会計士の方へメッセージをお願いします。

能上: 独立前は不安がつきまといます。でも、やってみないと本当の良さは分かりません。少しでも興味があるなら、まずは一歩動いてみてください。先輩に話を聞く、セミナーに参加する。それだけでも未来は変わります。考えすぎて動けなくなるより、まず試すこと。きっと「なんとかなる」と思えるはずです。

先生のご紹介

能上 高行 [NOGAMI TAKAYUKI]
略歴:税理士。大学在学中にアルバイトで所得税が引かれたことをきっかけに税務に興味を持つ。心理学専攻だったが、一念発起し専門学校に入学。3年で税理士資格を取得。卒業後はデロイトトーマツ税理士法人で4年間、その後は三菱UFJ信託銀行で4年間勤務。サラリーマン経験を経て、31歳で独立。
現在は税務に留まらず、経営者の事業全般の相談に乗る「伴走型パートナー」として顧客に寄り添う。
所在地:東京都新宿区神楽坂6-38 中島ビル301
HP:https://kagura-tax.jp/